heroism

□夢てふものは
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いつも不機嫌そうな横顔は、話しかけようとする者を拒絶するかのようだった。


「(だからいつも挨拶するのを、戸惑う)」



首にはいつも大きなヘッドフォンが下がっているし。


「(訳の分からない洋楽を聴いているんだ)」



笑わないというか、彼にとって面白いことがこの世に存在していないのかもしれない。


「(無表情、というより怒っているみたい)」



別に格好つけてるんじゃない。それでも、電車のつり革に怠そうに掴まる姿さえ大人びていて。


「(置いて行かれている気がする)」




嗚呼、なんてこの男、憎たらしいんだろうか。

そう思って眉根を寄せた時、電車がカーブ部分で大きく揺れてよろけてしまう。慌てて手摺を掴もうとしたけれど掴み損ね、人にぶつかりそうになった瞬間。



「おい……」

「……すみません」


まるで配慮のない、言ってしまえば乱暴に首に腕を回されなんとか前方にはっ倒れるのを阻止して頂いた訳だが。


その腕を回してきた張本人の溜め息に、ちらり、顔だけで振り向くと酷く呆れた瞳と視線が合う。

 
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