短編
□六花 〜rikka〜
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「わぁっ、すごい雪!」
玄関を開けて飛び込んできた景色は一面の銀世界。
こんな時、私が決まって思い出すのはあのクリスマスイブのこと。
島原大門で待ち合わせた時も、こんな風に雪が降り積もっていた。
だけど、あの時くれた羽織のようにあたたかい彼がいたから、寒さなんて気にはならなかった。
あれからいくつもの月日が経ち、身を裂かれるような想いもした。
あの時の雪だるまは、もう溶けてしまったけど、現代に戻ってきた今でも鮮明に覚えている。
身体を冷やしてはいけない、と言ってくれた彼の心遣い。
自分の子供を産んで欲しい、と言った彼の純粋な想い。
そして、おじいちゃんになっても私のことを追いかけていたい、と言った彼の無邪気な笑顔。
そのどれもが大切な思い出。
当時のことを思い出すと、自然と頬が綻んでくる。