Novel

□魔女
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ポタリ、ポタリ、と雫が床に落ちる音。落ちた雫は古びたフローリングの色を変えた。バサバサと乱雑にタオルで髪を拭えば、雫は更に床へと散っていく。
頭を拭いたタオルを首に巻いて裸のまま、何も着ていないそのままの姿で、部屋を歩いて冷蔵庫から目的のものを取り出す。

風呂上りの熱い身体を冷ますように、冷たい水が口を、喉を、潤していく。

口の端からこぼれていったものを手で拭った。
テーブルの上。昼間に届いた1通の手紙。封筒に送り主の名はなく、ただ、宛名の住所だけが書かれている。
ペーパーナイフで封を切って中身を取り出す。
そこに書かれた無情な文字。残酷な頼み。

1枚、明るい表情で笑う少年の写真が手からこぼれ落ちていった――……

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