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□縋った相手
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わかってた、わかってた筈だった。
気づきたくなくて、見ないふり。
容赦なく降り続く雨が、写す私の心。
( 縋った相手 )
外に出よう、なんて思わなければこんなことにならなかったのかもしれない。
寝れなかったから風にあたろうって思った、ただそれだけだった。
自分の気持ちにだって薄々気づいていたのだ。
私の銀ちゃんを見る目が、ただの銀ちゃんじゃなくて、何か特別な感情が、奥底に有ったこと。
でもそれは、感情の起伏の激しいようなものではなく、ただの淡い恋心だったと思い込んでいた。
-思い込んでいただけで。
私の知らないうちに大きくなっていたそれを今、思い知らされた。
暗い、夜の中。
抱き合う二人の影。
銀パツの天然パーマと、ポニーテールの美女。
心の壊れる音が、確かに聞こえた。
どうして頬を赤らめているの?
どうしてそんなに優しく抱きしめてるの?
どうしてそんなに幸せそうなの?
「じゃ、送ってくから」
そういって姉御の手を握る銀ちゃん。
ねぇ、本当に送っていくだけなの?
ちゃんと、帰ってきてくれる?
二人の間には繋がれた手と手。
見るのが辛くて。
でも、今戻っても寝られないような気がした。
銀ちゃんたちが見えなくなってから、私もいつもの公園の方向へ歩き出した。
もう、暗い夜更け。