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□気に食わなくても、こういうときは
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いくら自分をおちょくってくるやつでも、バズーカで撃たれていても。
こういう位は可愛いと思ってしまう俺は、やっぱりこいつの上司なんだと思う。



( 気に食わなくても、こういうときは )




肌寒い空気が漂う街から、温かく、香ばしいコーヒーの匂いのする店へ入ったときの幸せといったら。


適当に席について、二人分のコーヒーを頼む。

かしこまりました、と営業スマイルな店員とは打って変わり、メニューを見ながらボーッとしている亜麻色の髪の青年。


黙っていれば好少年なのに。


お待たせいたしました、とコーヒーをそっと俺と向かいの総悟の前に置いていく。

マヨネーズを容赦なくコーヒーにぶっかける。
そんな俺にツッコみもせず目の前でなにやら難しい顔をした総悟。

今だ口を開かない。

ファミレスでも寄りませんかィ、なんていったのは総悟だった筈。


別にこの沈黙が気まずい訳でもない。
でも、なんだか俺から口を開かなければいけない雰囲気に感じるのは、俺だけだろうか。


「・・・なぁ、総悟?」

「なんですかィ」

「どうしたんだよ、何か話あんだろ」



「話、っていうか・・」



総悟が次の言葉を発そうとした、その瞬間。


カラン、コロンとベルの音。
俺より早く、その声を聞いて振り向く総悟。

見慣れた銀パツの隣で楽しそうに話すソプラノ。

「ねぇ、銀ちゃん、私ハンバーグが食べたいアル!新八はいつもうっさくて食べさせてくれないから!」

「ったく、昨日たまたま勝った金があるからいいけどよー・・・今日だけだぞ?」

「やったー!銀ちゃん大好きアル!」



銀パツの糖分野郎にぎゅっとしがみつくチャイナ娘。


「・・・おい、総悟?」


-今まで、こんな顔したことあっただろうか。
コイツが本当に、いつもいつも得意のドSっぷりで俺をおちょくるあの総悟だろうか。

ただ、切なそうな視線。


視線の先には、総悟ではない-万事屋の隣。
隣で人の気も知れず、無邪気にその笑顔を万事屋に魅せる。


「あれ、多串君に総一郎君じゃん、どうしたの、こんな所で?ヤロー二人で」

どっちも間違ってるじゃねぇかって突っ込もうとしたが、それより先にチャイナ娘が総悟に話しかけていた。

「こんなところで何してるアルか、さっさと働けヨ!」

「・・・江戸の治安を守る警察様には、束の間の休息だって必要なんでィ」


明らかに、いつものチャイナ娘と言い合いのテンションではない、総悟の声。


「・・・サド?」

聞かれても、答えない。
どうしたものかと、総悟を見てみる。

切なさと悲しさと、混じった顔。


そうか、やっぱりコイツは-



「-チャイナ」

すっと席をたち、万事屋の隣の少女の腕をつかみ、さっきコイツらが入ってきたドアの方向へ引っ張っていく。

「ちょ、サド!?何するアルか!」




「いいから、黙ってついて来い」


その時の総悟の顔は少し、怖かったとか。



また、カランと音がなる。
残された傍観者の俺たち。


「・・・まぁ、座れや」

「ちょっと、お宅の子、どういう教育してんの?うちの娘どうしてくれるのさ・・・」


とは言いながらも、ちゃっかり総悟が座っていた席についている。

「どこいったんだよ、アイツら」

総悟が全く手をつけなかったコーヒーに、凄い勢いで砂糖を入れながら、万事屋が誰に言うのでもなく呟く。


「さァな」


気持ちとしては、少し寂しいなんて。

薄々、アイツがチャイナ娘のこと、って思うことはあった。
でも、あんな顔を見せるなんて。
予想もしない行動に、さっきから地味に驚いてばかり。

感情、殺しているつもりだったのだろうか。

「何、土方くん。さっきから外ばっか見て。もう総一郎くんにかまってもらえないなーとか思ってるの?」



「んなこと、思ってるわけねーだろ。こちとら、やっとあのバカ共の決闘が終わるんじゃねーかって安堵してんだよ」

かまってもらう、というか。
一番隊隊長とはいえ、まだ18歳の若いやつだし、どこか親心みたいなのがあった。
独り立ちしていく後輩を見ている気分だったのかもしれない。


「大丈夫、心配しなくても銀さんが土方くんとは遊んであげるから。」

「余計なお世話だ!」


まぁ、コイツみたいなバカもいるし。



気に食わないけど、結局は大事な部下。
アイツ誰かを-あの娘を護る為に刀を抜く日は、そう遠くないのかもしれない。






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なんだこれ。なんなんだこれ。
土方に恋愛相談する総悟さんが書きたかったのにどうしてこうなった。
これどっちかっていうと銀土じゃね?っていうツッコミはなしで。私が一番感じてます。

最初は土沖にもなりかけました・・・危ない。

沖田と神楽ちゃんを見守る土方と銀ちゃん。
土方サイド頑張りました。

神楽ちゃんをつれてどっか行く沖田さんの話は、また書けたらいいなと思っています。






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