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□関係の違いって
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( 関係の違いって )


仲のいい二人、ではあった。
確かに気に食わないことだらけで、すぐに物壊してケンカして先生を困らしている。
でも決して嫌悪感を感じるものではないし、一種のじゃれ合いだと最近は思い始めた。
かけている迷惑はじゃれ合いどころではないのだが。

でも、こうして帰りに必ず家に寄って、何かしらをして時間を潰して、何も起こらずに帰っていく、という関係はどうだろうか。

そりゃあこんな俺たちだけど、それでもあくまで男女であった。
もうこいつが毎日家に来るようになって三ヶ月、いや、もう半年くらいはたつんじゃないか?

まぁ、とにかく-


「おいサド!サイダーおかわりアル!」


こんな色気のないことを言うヤツが、毎日夕方出入りしている、という訳である。


俺は一人暮らしで、コイツと家の方向が同じと判明する前まではいつも一人で自転車で坂を下って、このマンションに帰っていた。

でも、コイツと帰り道偶然会って自転車を引いて帰るようになってからというもの、俺の自由な時間は大分減ったと思われる。

別に嫌じゃないけれど。

さて、今日はこのチャイナ娘はいつまで家に居座ってくれるのだろうか。

志村姉にでも借りたのか、チャイナらしからぬファッション誌を数冊床に広げて難しそうな顔をしてページをめくっている。
あぐらをかいて俺がしぶしぶもってきた三杯目になるサイダーを飲みながらなので、色気など何にもないのだが。


「チャイナ、そういうの読むのか、意外」

「私だって立派なレディーアル、姉御が貸してくれたんだからしっかり読むネ」

「・・・へぇ」

覗き込んでみると、ヘアアレンジやらコーディネートやらが載っているページをまじまじと凝視していた。
いちいちこの髪型はできないアル、とかこれは姉御にぴったりネ、とか独り言を呟きながら読んでいるので気にせずにはいられない。


「おお、これちょー可愛いアル!」


どれどれ、と雑誌を拝借(という名の奪い去り)してみると、確かに可愛いツインテールの髪形だった。


「おい、返せヨ!まだ私読んでるネ!」

「・・・これ、多分今できるぜ?やってやろーかィ?」

「まじでか!やってヨ!」


そういうと、つけていた髪飾りを両方ともはずし、縛った髪を下ろすチャイナ。


「・・・やっぱり、髪下ろすとイメージ変わるな」

「そうアルか?別にかわんねーと思うアル・・・」


俺はチャイナの髪を縛りやすいようにソファーに座り、チャイナの髪を手にとった。

ふわっと香る、シャンプーの香り。

特徴的なピンク色の髪は思っていたよりやわらかくて、意外と細かった。

髪を頭の結構上の方でまとめて、チャイナが縛っていたヘアゴムで結ぶ。


「・・・へぇ、結構上手いアルな」

「姉上が髪を結ってるのをずっと見てたからだろーな、なんか出来るようになってた」

「お前、弟だったのカ!?」

「言ってなかったっけか?」

「初耳アル」


そうか、姉上のことなんて滅多に話さなかった。まぁ、故人だということもあるのだが。


「・・・姉上は三年前、病気で亡くなりやした、まだ若かったのに」

「・・・ごめんアル」


チャイナが下を向く。
縛りにくいから、と顔を上げるように促すが、聞いちゃいけないことをきいた罪悪感でもあったのか、なかなか顔をあげようとしない。


「もともと体が弱かったんでィ、気にすることじゃねェ」

「・・・でも」

「・・・それに、今はこうして毎日お前が家来てるんだから、変わんねェよ」




笑いながら言った。
そうすると確かにナ、と笑いながらチャイナは顔を上げた。



「・・・できた」

「おお!ありがとアル!さっそく姉御に送ってみるアル」

そういうとケータイを取り出してピースサインを作って自撮りしだすツインテールチャイナ。


・・・自分で結っておいていうのも何だが、チャイナにすごく似合っている髪型だと思う。
そう考えながら、気づいたらずっとそんなチャイナの後姿を凝視している自分がいた。


こいつは無意識なのかもしれないが。
普通、嫌いなやつに自分の髪を触らせるだろうか?
普通、嫌いなやつと一緒に下校するだろうか?

いや、しないだろう。
ましてや毎日家に寄るなんてもってのほか。

-ずいぶん前から、チャイナのことは気になっていた。
そりゃ最初は、何かと目が合うと決闘だの何だのを繰り広げていたが。

もう、少しくらいは自惚れてしまってもいいんじゃないか。


「・・・サド?」

「え、あ、何?」

「さっきからずっとボーッとしてるアル」

「あー・・・考え事」

「考え事?何だよ、気持ち悪いナ!」


いやいや、何もしていないのに気持ち悪いとか言われても。
傷ついたまま、苦笑した。

(だから打たれ弱いんだっつーの・・・)

そんなことを考えながら、チャイナがいつも帰る時間は刻一刻と近づいていた。



「じゃあナ、次はコーラと酢昆布用意しとけヨ」

「それ、合わねェだろ」

「ごちゃごちゃゆーなヨ!」

それじゃ、といって階段の方向へ歩いていく。


-何もしないより、行動して当たって砕けてみようとおもったのは、ほんの出来心。


「-え?」

「コーラと・・・何だっけ?」

こんなことを聞くのは、ドアの前からでも十分な距離、だったのだが。

背後から抱きついて耳元で囁く計画だったけど、緊張と拒まれる不安で、あんまり上手くはいかなかった。形だけはそれっぽいはず。


「す、酢昆布!3箱以上買っとけヨ!」

そう言って自分の腕の中から離れていくチャイナ。


-階段を降りるときに見えた、その赤い頬を俺は絶対忘れない。



( なんだ、脈ありかよ )




--------------




いつも部屋でごろごろしている神楽ちゃんが書きたかった。
もうちょっと総悟にはキメて欲しかったのだけれど、ごめんね、ちょっとカッコづかなかった。(笑)
神楽ちゃんも何かと緊張しているのかも。してないかもしれないけど。

この二人、どちらかが素直になればいいのにそれができないからあーなっちゃうんでしょうね。初々しい。

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