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□君にとっての僕、僕にとっての君
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( 君にとっての僕、僕にとっての君 )
「江戸を離れる?」
公園で会ったヤツにそう告げられたのはいつだったか。
至って冷静な表情でこくりと頷くその亜麻色の髪。
「結構急に決まったことでなァ・・・、武州の近くあたりの事件を俺が任されたんでィ、二週間くらいですぐ帰ってくるけどな」
「そんなに厄介な事件アルか」
「まぁな」
「・・・お前一人アルか?」
「なわけねェだろ、何人か隊士も連れてく・・けど」
「けど?」
ふぅ、とため息をついてから、
「近藤さんとは、しばらく離れることになるから・・・、またアイツの株が上がっちまう」
と呟いた。
アイツとはおそらくトッシーのことだろう。
コイツまだそんな事考えてたのか・・・
「バカアルなァ」
「はァ?てめ、やんのか」
やんねーよ、とコイツにはき捨てて、一度座っていたベンチを立つ。
「トッシーとお前、どっちが副長だったとしてもゴリラからの信頼は変わんないネ
それに、立場でそんなこと決めるようなヤツじゃないのはお前が一番分かってるだロ」
「・・・そんなこと、言われなくても分かってるんでィ」
「なら」
「・・・でも、どうしてもアイツの存在が気になるんでさァ」
-コイツの気に食わない、の中には、自分にはないものを持っているトッシーへの羨ましさもあるんだろう。
そんなことは私でも分かるし、コイツだって十分理解している筈だ。
ちゃっちいやつアルなぁ、と言おうとしたけどやめた。
今のコイツを傷つけてしまう言葉な気がして。
-ちょっと待って。
今まで、傷つけないようになんて考えたこと、あっただろうか?
・・・ないじゃん。
じゃあ、なんで今そんなこと考えた?
「・・・つまんねー話聞かせたな、戻るわ」
そういって離れていきそうな黒い隊服を、思わず引き止めてしまった。
「え?」
最初こそ私のほうを見て驚いた沖田だったが、だんだんといつもの憎まれ口を叩くときの沖田に戻っていた。
「何でィ、寂しくなったのか?」
そういって優しく笑いかける沖田。
調子が狂う。なんでこんなことするの。
お前の顔みなくていい日が二週間しかないなんて短すぎるアル。
二度と戻ってくるなヨ。
のたれ死ねばいいネ。
憎まれ口ならいくらでも出てくるのに・・・
何故か肝心な、今言わなきゃいけないことが出てこないんだ。
さっきどうして、コイツに助言できたんだろう。
コイツと顔を合わせればいつも取っ組み合いになるのに、まともに会話なんてほとんどしないのに。
「・・・お前なら大丈夫ネ、そんな性格ひねくれた変態でも、護るもん護ろうとしてるのはみんな知ってるアル」
-どうしてこんなにコイツのことが分かるのか。
それは、驚くほどに簡単だった。
「・・・だから変な心配してんじゃねーヨ。・・・万が一、何かあったら、また私が喝入れてやるアル・・・・」
私がそういうと、コイツはふっと笑って言った。
「お前に入れられる喝なんて持ち合わせてないんでィ」
「・・・ってめ、人の親切を・・・!」
その答え。
私がコイツを、知らない間に意識していたからである。
(早く帰ってこいヨ)
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衝動のままに沖神。
神楽ちゃんデレデレじゃないですか書いてみて気づきました。