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□先輩ジェネレーション
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例えば、いつも気に食わない素振りを見せてくる後輩が、突然俺に相談を持ちかけてきたら、少しは警戒もしてしまうだろう。

剣道部である俺は何故か竹刀を握る手を力んでしまった。

「土方先輩、別に何もしませんぜィ・・・」

そう言うのはそうあきれながらこいつもまた剣道着を着たままこちらを向いている、俺の後輩の沖田総悟である。

こいつは入部した時に変に敵意識され、事あるごとに何か言われてきた。
まぁ、数少ない可愛い後輩でもあるし、それさえもまぁしょうがないとも思ってきた。


だが今日とうとう、こんな状況になってしまった。
まさかの宣戦布告?



「・・・先輩は、好きな女、いますかィ?」


あまりの予想外の質問に、俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。



( 先輩ジェネレーション )


「なんだその質問は」

「何でもいいじゃねぇですかィ、いいから答えてくだせェ」


俺はしばらく考えた。

-考えてみれば、自分から告白したりしたことはなかった。
ましてや、付き合うことも。
告白はされるが、いつもピンとこなくて断ってばかりだったのだ。


そりゃあ、気になる女の一人はいたが、そいつは-

だめだ、思い出すと柄にもなく泣けてきちまう。
本当にソイツが好きだったから-
今もずっと引きずっているのに近いのかもしれない。



強い風が、俺たちの目の前の木を揺らした。



「・・・今はいねェ、かな」

「・・・そうですかィ」

地面の砂を足でいじりながら総悟は呟いた。

「お前は?いんのかよ」

「好きっていうか・・・、それが分かんないんでさァ」



少し驚いた。
コイツは顔もいいし、剣道の腕も部内で1,2を争うほど。
言い寄る奴なんかいくらでもいるとおもったのにこんなに初々しい恋愛をしているとは。

そうなると、これは「恋愛相談」、という訳か。
やべぇ。そんなんされたことねぇ。


「どんな奴なんだよ?」


「うーん・・・ゴリラみたいに怪力で、色気が無くて恐ろしいほどよく食って、事あるごとに張り合ってくる・・・なんか、気に食わないヤツ?」

「ボロボロじゃねーか」


「・・・ほんとに、女ッ気がないただのゴリラなんでさァ・・・でも、なんか」

「なんか?」


「笑った顔が、すっげー可愛くて・・・、気づいたら目で追ってるんでさァ」


言い終わったと思えば、目を手でかくしながらあさっての方向を向いた。
はぁぁ・・・といいながらしゃがみこむ。

なんだコイツ。
もう十分ベタ惚れじゃねーか。
相談する必要もないくらい惚れ込んでやがる。

「それ、告白すればいいじゃねーか」

「はァっ!?」

ぶん、とこっちに顔を向けて、無理無理、と顔で訴えてくる。
竹刀で地面に何かを書きながら総悟は、

「・・・今の関係が壊れるのが、怖いんでィ」

と言った。


なるほど、と何故か納得してしまう自分がいた。
今、コイツはそのゴリラ女と犬猿の仲だけど、よく言えば喧嘩するほど仲がいい、の関係にあるということになるし、下手に告白してその関係が壊れたら・・・そりゃあ辛いだろう。

でも、いつも俺にはおかまいなしで竹刀振ってくるのに、・・・本命には奥手ということだろうか。


「あたってくだけてみりゃいーんじゃねーの」

「砕ける前提?ひでェな」


そういいながらはぁ、とため息をついた総悟。



そして、




「まぁ、一度砕けてみますかねィ」



と言ってニッと笑った。




「ありがとうごぜーやした、先輩」



そういいながら竹刀を振り回して走っていった後姿に、少しぼーぜんとした。



(先輩って)

初めて言われた。
初めて土方コノヤロー意外の名前で呼ばれた。


アイツが色恋どうこうでつまづいているなんて考えもしなかった、が。
人に頼られて悪い気はしない。

想い人を探す後輩の姿は、やけに可愛らしく思えた。




( 心配しなくても、上手くやるだろうな )




fin.






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普段は土方をちょくるけど神楽とかのことになると物事を冷静に判断できる土方に相談する沖田とかいたらいいとおもいます!

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