ディアラヴァ

□I want you*
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ユイは、いつの頃からかスバル、スバルと考えながら日々を過ごすようになった。彼の凶暴な様子に最初は恐怖すら覚えていたユイだが、だんだんとユイはスバルのことを求めるようになっていった。そして、ユイは彼の中の優しさすら見出すようになっていった。

学校が終わった。屋敷の廊下でユイが歩いていると、何者かがユイの肩に触れた。誰だろうか、もしかしたらスバルだろうか……とユイは期待を膨らませる。しかし、その期待は裏切られる。それはいつもユイに意地悪をしてくる坂巻家の三つ子の一人――アヤト――だった。 アヤトはいきなりユイの肩を抱いて、ユイの胸を撫でながらこう尋ねる。


「なあ乳なし、今日もお前の血ィ吸わせろよ」
吸わせる。それがどういう意味か、ユイはこの屋敷に来てから嫌と言うほど思い知らされてきた。血を捧げることだ。ユイはこの屋敷のヴァンパイア達に幾度も強引に血を吸われてきた。ユイはそれでもなお拒絶する。
「吸われたとき、あんなに気持ちよさそ〜にしていたくせに、よくそんな風に言えるもんだぜ」
アヤトはその様子ににやりと笑う。
「昨日だって、ほら……なぁ? 抵抗していたけれど、結局欲しかったんだろ? 素直になっちまえよ……」
確かにユイの中には、アヤトの行為に嫌悪感を感じるユイと同時に、血を吸われることに快感を覚えてしまうユイも居た。ヴァンパイアの吸血は吸われる者に性的快楽をもたらす性質があるためだ。嫌だ、嫌だとユイは心の中で叫ぶ。だが分かっている。どんなに抵抗しても、ヴァンパイアたる彼には敵わない。だから、ユイはこれまで耐えてきた。アヤトはそんなユイの髪をかき分け、うなじを撫でる。
「じゃあ……吸わせてもらうぜ……」
アヤトがユイの首に牙を突き立てようとしたその時、もう一つの影が現れて彼の行動を制する。
「おいお前、そいつは俺のもんだぞ」
怒りに満ちた声が場を支配する。白髪の少年――スバル――が、アヤトの肩を掴む。アヤトが抵抗するより早く、スバルはアヤトを壁になぎ倒す。
「ってえ!! なにすんだ!」
壁に叩きつけられたアヤトは痛みに顔を顰める。
「むやみに手出ししたらマジでぶっ殺すってわかってるだろ?」
アヤトがひるんでいる隙に、スバルはユイを自分の胸に抱きよせる。
今まで恐怖に震えていたユイの髪を、スバルは優しく撫でる。
「……お前……大丈夫だ。そんな心配そうな顔をするな」
そう言うと、彼は目の前のアヤトに対して険しい顔で向き直る。
「今日はコイツの目の前だからな、勘弁してやる」
「へっ、今日は貸してやるよ」
アヤトは憎まれ口を返す。
「馬鹿を言うな。こいつはもともと俺のもんだ! 勘違いするな……」
スバルは相手にしたくないとでも言いたげに、踵を返してユイの腕を強引に引く。
「こっちに来い」
スバルはユイを自分の部屋に連れていく。
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