ディアラヴァ

□捕食対象
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「さ、早く首出せよ」
スバルはユイの首を掴むと、白くなだらかな肌に牙を突きたてた。

お前はただの餌だ。
俺がお前を欲しいと思うのは、お前の中にあるその血が欲しいからだ。
なぜなら、ヴァンパイアはニンゲンの血がないと生きていけないから。
それ以外に理由なんてない。
強いて言えば、ユイの血が他の奴に比べて旨いから。
誰だって高級サーロインステーキを食べたいとは思うが、
そんなステーキが無くたって生きていけない訳じゃないだろう?
その程度のこと。

――じゃあ、なんで俺の胸はこんなにザワザワしているんだ?

ユイが他の奴に吸血されるところを見ると、すごく嫌な気持ちになる。
快感に抗いきれず、ユイが俺以外の兄弟に吸われているのを見ると舌打ちしたくなる。
――まるで、他の別のものが俺の中に入ってきちまったように。
「ああ、畜生」
スバルはユイの肩に痕を残す。
胸の中のイライラが収まらない。
抑えられない。

ふとスバルがユイを見ると、彼女は涙を流していた。
「な、なんで泣いてんだ、お前」
ユイが痛みで辛そうにしている様を見て、スバルの胸はちくりと痛む。
「ああ、泣くな。泣くんじゃない」
彼女の頭を撫でながら、子供のように震えるユイを慰める。
「……痛かったか? すまなかったな」
スバルは、先ほどユイの肩に付けてしまった傷痕にキスを落とす。

――こんなの俺のガラじゃない。

そんな風にスバルは思いながらも。
スバルはこの胸のざわめきの正体が一体何なのか、まだ知らない。

~fin~

2012.10.11

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