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□帰郷
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ザァァァ──────…



さらりとした潮風が頬を撫で私を追い越した


石畳の上にのある枯れ葉を浮かせ、青空へ運び上げる




『レガーロ…』






1.帰郷






エメラルドグリーンに輝いた海。
雲一点ない雄大な青空。
港を飛び交う勇ましい声。
街には昼食を終えた子供たちが駆け巡っていた。



交易島、レガーロ。

各国からの船が入る平和で穏やかな島。
豊かで美しさを持ったこの島には、その平和を守らんとする勢力があった───…



「キャーッ!!!」


平和なこの島には似つかわしくないその悲鳴に、誰もが振り返った。


「助けて!引ったくりよ!!」


女性が指差したその先を走る男。
今日の運送船に乗ってた善良な青年が後を追おうと身構えた時、スッと横から伸びた手がそれを制した。


青年が見上げればハニーブラウンをなびかせたレガーロ美人。
太陽色の瞳に一瞬動きを止めた。


「おい!退けよ!!」

「……止めときな」


酷く冷静な言葉に顔をしかめ、強気に言い返した。


「なんだよ、盗まれちまうだろうが!」


「………あんた、観光客?知らないの?この島は、あんたが追う必要は無いの」


は?と言い返せば通りの向こうから男の悲鳴。


青年は慌てて目を向けた。
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