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□旅人はいかに
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タッタッタッタッ───……
「ハァ…ハァ…ハッ…」
明け方の裏通り。
「こっちに居たぞ!」
「逃がすな!捕まえろ!!」
ひたすら走り続けた先は、白い壁。
「もぉ逃げられねぇぜ?」
「さぁどうする?旅人さんよ」
ケタケタと笑いながら数人の男たちが近づけば、
旅人と呼ばれた者は振り返った。
被っていたローブをとり、現れた薄いブラウン。
「何度も言ってんじゃん、私は平和主義者なの」
3.旅人はいかに
「んっ…っ……」
カーテンからこぼれる光に重たい瞼を開ける。
昨夜はあまり寝れなかったようで、眠たそうに目を擦った。
リベルタはああ言ったけど、気になることはまだある。
ルカの記憶の中で見た、あの少女。
私には見覚えがある。
いったいどこで……?
ぼーと天井を見ていると、部屋の扉が静かに開いた。
「お嬢様?今朝はお早いですね」
「…うん……」
顔をのぞかせたのは悩みの対象でもある従者。
ティーセットをもってベットの横に立った。
「今日は巡回もありませんし、特にセリエの仕事もございません…どうしますか?」
「…町にいく」
「分かりました。
私はマーサの手伝いがあるのでご一緒できませんから、くれぐれも気をつけて下さい」
やけに最後を力強く言った彼にコクりと頷く。
渡された紅茶は、眠たい朝には丁度いいハーブティー。
フェリチータはゆっくりとカップに口づけた。