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□真実
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"愛しい人"

そんなもの、馬鹿らしいと思っていた

いや、今でも。

ただ大切なだけ。それで充分。

過ぎた感情は人を盲目にする。愚かだ。


愛するならそれなりの代償を。

何かを犠牲にしなければ何かは得られない。

等価交換だ。



大切な者を守るために、
僕らは一体、どんな代償を払えるだろう─…


8.真実





バンッ


「ジョーリィ!」

「待って下さい、お嬢様!!」


夕暮れ過ぎ。

勢いよく扉を開けて詰めよったのは、
他でもないジョーリィ。


焦ったようなルカが後ろで立っていた。


「これはこれは、お嬢さま。
今日も相も変わらず元気だな。」

少し馬鹿にしたようだが、
手元の本からは視線を外さないジョーリィ。


「ふざけないで。」

「随分焦っているようだな。
私に何のようだ」


「ジョーリィ、知ってたんでしょ」


あの子を、と続けられて思いつくのは1人。


「会ったのか」


「伝言を頼まれたの」


その言葉でやっとサングラスの向こうから此方に視線を向ける。


その鋭さに、一瞬
背筋が冷えたが、尚も強く見つめた。


「お断り、て。」

返事は無いまま、
ジョーリィは口角を上げた。


「どうゆうこと?説明して」


「なにをだ?」

「全て。あの子は何者なの。」


人を平気で殺せる、
残酷で美しい少女。

温もりを感じる目は冷たく光る。

「……まったく。
お嬢様の好奇心はモンド譲りだな。」

薄く笑みを浮かべ、
本を閉じるジョーリィ。

視線を私たちからはずし、
記憶を手繰り寄せるように遠くを見た。


話そう、
酷く哀れで、醜い、馬鹿げた話。

孤高の姫の、物語───…
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