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□記憶のオレンジ
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『デビト、それなあに?』
『あァ?これ?銃だよ』
磨き途中の拳銃を見せるようもちあげた。
『へー…綺麗だね‼」
眩しい笑顔が目の前で弾け、
まだ幼い姿をしたデビトは顔を背けた。
『バァカ、これは人を殺すもんだぜ?』
どこか後ろめたさを感じるその顔に、少女は首をかしげた。
『ふーん…でもそれ、デビトがさ__…』
12.記憶のオレンジ
「ん……っ‼」
朝日の差し込んだ室内で、
灰色の髪を流した男、デビトが起き上がった。
その姿は先程とは違い、レガーロの女達を騒がせるそれだった。
灰色の髪の奥では、翡翠色が光っていた。
対になる琥珀の瞳は揺れ、息は少し乱れている。
「ハル…?」
夢の中に出てきたオレンジの瞳の少女。
同じ色をもった者を、彼は知っていた。
最近増えたファミリー、ハル
雰囲気はだいぶ違うが、そのオレンジが重なった。
ベッドから出て、前髪をかき上げる。
ふと視界に入った、テーブルの上に置かれた2丁の拳銃。
ゆっくりと近づき、ボティに触れた。
「寝覚めがわりぃな…」