PLAY ROOM(置き場)

□原作で遊ぼう
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■第五百二十一訓『戦の後には烏が哭く』で高土しよう2

「――いやだぁあああああっ」

 高杉が釈杖に背中から貫かれた瞬間、土方の口から悲鳴が迸った。
 万事屋と高杉のやり取りは長年高杉の傍にいた土方でさえ意外なものだった。いつも余裕綽々で土方をからかい、たまには思う存分殴ってやりたいと思っていた男の思いがけない真実――友を殺し自分もまた友に殺されるべきだと、死にたいと思っていたなど少しも知らなかった。そんな重苦しいものを抱えていたなどと。

(俺が、知ってたら)

 どうにもできなかっただろう。悔しいがこれは彼ら自身でなければ解決できない問題だ。同じ苦しみを抱えた者同士だからこそ愛し、憎しみ、許せるのだ。どちらが正しいということでもない。高杉の憎しみは万事屋の痛みを癒すだろうし、万事屋の愛は高杉を癒すだろう。部外者でしかない土方の割りこめるものではない。
 だからこそ、高杉のホッとしたような最後の顔が土方には泣きたいほど嬉しかった。だというのに

「ぁああああああしんすけええええっ」
(これは、いったい、なんだ)

 誰が
 誰がいったい
 いったい何のために
 何の、誰が彼らの邪魔をするというのだ。
 誰が
 だれがだれがだれが

(晋助を!!!)

 頭が混乱してうまくものを考えられない。
 混乱の原因は

「あ、あ、ああ、ああああ、」
「駄目です土方殿!」

 誰かの聞き慣れた声が制止したのも土方の耳には入らなかった。つま先が地を蹴り高杉の向こうへと、隠れている誰かへと突き進む。

「駄目だ!!」

 進もうとした土方の細い手首を捉えた手があった。

「行くな」

 それが他の誰かだったら土方は止まらなかっただろう。誰かを斬り捨ててでも突き進んだはずだ。
 だがその声は、高杉と死闘を繰り広げていた男のものだった。高杉と同じ苦しみを抱く男のものだったから。その手が未だ高杉と自身の血で汚れたままの弱弱しいものだったから、土方には振り解けなかった。

「万事屋、なんで…」
「てめーが死ぬことを高杉は望んじゃいねえ。それに、そいつだってそんな簡単に死ぬような奴じゃねえ」
「でも!」

 このまま放っておいたら一瞬ごとに死が決まっていってしまう。それでも、止めると言うのか。

「頼むから、てめーまで命を捨てるような真似をしねーでくれよ」
「あ、ああああ」

 晋助、高杉、総督、誰か、助けて。

「高杉いいいいいいいっ」

 誰か――神様に自分の無力を訴え助けを求めたのは初めてだった。
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