PLAY ROOM(置き場)
□原作で遊ぼう
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■第五百五十一訓『別離』で高土しよう
※高杉が眠り姫のままだとわかる前に書いてます
近藤さんが最後にゴリラ女に会って気合いれてもらってくる!と飛び出してって他の隊士連中も最後にあの娘に会うんだと散り散りに消えて行った。最後に会いたい相手がいるってのは悪くねえ。山崎に俺も誰かいないのかと言われたので殴っておく。
「会いたい相手ねえ」
正直言えばいないわけじゃない。一人だけ、これでもし死ぬんだとしたら見ておきたい顔がある。
ただそいつは、他の連中ほど気軽に会いに行ける相手じゃない。先日、伊賀でニアミスしたとき奈落に大怪我させられたらしい。俺はその場にいなかったし、その場にいた連中は一連の出来事を図ったのは鬼兵隊だったけど最後は天導衆に利用されてたらしいってくらいしか言わなかった。
「…」
俺もそれ以上突っ込んで聞ける状況じゃなかった。突っ込むなら理由が必要だし、その理由を俺は誰にも近藤さんにも隠し通してきた以上な。
「…あ」
煙草が切れた。どうやら今吸ってたのが最後の一本だったらしい。暫く屯所に帰らなかったから買い置きもないことに今更気付く。
煙草でも買いに行くかと玄関に向かう。
煙草を買いに行くだけだ。
どこにいるかわかんねえ奴を探して会いに行くような時間はねえからな。アイツが怪我するほどの状況ってか、アイツが重傷を負うってのも想像できねえが、アイツのことだからきっと大丈夫だ。
それにしても真選組がまさか攘夷志士と手を組むことになるとはな。どうせなら桂じゃなくてアイツと――ってのは望み過ぎか。それに、アイツがそれを望むとも思えねえ。
「あー、暇」
屯所から一番近い自販機に金を入れようとしてマヨボロが売り切れてるのに気付いた。
「んだよクソッタレ」
ないとなると余計に欲しくなるものだ。だが馴染みのコンビニ、煙草屋にもマヨボロだけが無いとイライラしてくる。
「あーっ、クソ。なんでねーんだよ!」
足癖のよくない脚ががつんとゴミ箱を蹴りあげる。
これはただの八つ当たりだ。本当は行きたい場所があって、けど今の俺が行っていいのか行きたいと言っていいのかわからない。そのイライラがはけ口を求めてるだけだと本当は分かってる。
けどあえて俺はそれに知らない振りをしている。そのせいで余計にイライラが募ろうとも。思わず店員に絡んでしまったとしても。
「なあ、なんでマヨボロねーの。ちょっと怠慢じゃないの。ねえ」
「ええ、そう言われましても。うちもまさかマヨボロが売切れとか予想外なわけで」
「マヨボロは売切れちゃ駄目でしょ。ねえ」
「ええ、はい。そうですねもうしわけ」
「これが人生最後のマヨボロだったとしてさあ。どう落とし前付けてくれんの」
「土方」
「え、あの(ちょっと警察呼んで警察−!)」
「土方ってば」
「人生最後のマヨボロだよ。アンタらにこの意味分かる?アンダスタン?」
「ちょっ土方待つっス!」
自分でもこりゃあ警察じゃねえなと思い始めた頃、俺を止めたのはいつもアイツの傍にいた拳銃使いだった。
アイツか、アイツって誰だろねーなんてヤサグレてんのは俺か。俺ですか。
「…こんなとこで何してんだよ来島」
アイツの怪我の具合とか、お前がこんなとこふらふらしてるってことはアイツの怪我はもういいのかとか聞きたいことは幾らでもあったけどプライドが邪魔して聞けない。
「アンタがこんなとこで店員に絡んでなきゃ出てくる予定なかったんスけどね。せっかく準備したのに台無しッス」
「どういう意味だよ」
「アンタはマヨボロ追っかけてりゃよかったってことッスよ。まあいいッス。ちょっと予定とは違うけどこんだけ時間稼ぎしとけば先輩も文句はいわね―だろーし。くるッス」
まるで縦板に水だ。ちっとも意味がわかんねーけど、付いてこいと言われて素直に頷けたのも昔の話。昔、といっても実はそれほど時間が経ってないことに気付いて苦いものが込み上げたが、過ぎたものが多過ぎてその意味を噛みしめるにはもっと時間がかかりそうだ。
「行かねーよ」
「土方?」
「俺は、もうどこにも行かねえ」
「…あんた」
「もう俺は必要ないだろ」
土方たちが守っていた将軍を高杉は殺そうとした。そう、アイツ――高杉が。黙って殺される気もなかったが高杉は俺がそこにいることを承知で兵隊を投入してきた。前みたいに俺だけ隔離しようとはしなかった。それだけアイツが本気で事に掛かってたってことで、本気のアイツにとって俺の生死もその程度ということで。
わかってたことなので今更辛いなんて思わない。ただ、あの時高杉と土方の道は別れたのだとそう思っている。
「今更会ったって意味なんかねえだろ」
「…晋助さまはそんなこと言ってなかったっスよ?」
だとしても、
「けじめは必要だろ。少なくとも今の状況が変わるまで、俺は高杉に会う気はねえよ」
「会いたくないわけじゃないっスよね」
「伝えてくれ。また会えるまで怪我なんかすんじゃねえって」
「…しょうがないッス。けど怪我すんじゃねえってのは土方にだけは言われたくないって言うと思うッスよ」
それだけ言うと、来島は店を出てった。思い切りのいいイイ女だ。
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