ラクヨウのカケラ(text)

□ほわいとくりすます
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街は所謂X'masムード
しかし今の私にとって、このイベントは憎悪の対象でしかない

どこをどうやって終電に乗り 降りるべき駅で降りたのか覚えていないが、何とか改札を抜ける事が出来た

ぼっちの私は、フラフラと千鳥足でホームをさ迷い中

はい、私酔っ払いです

今流行りのお1人様で立ち飲みってヤツをしてきました

むしろ自棄酒です

自分を棄てる酒と書いて自棄酒です

私、つい数時間前に彼氏にフラれました
むしろ捨てられました

デートの待ち合わせ場所で彼を待っていたら一通のメール


内容は件名にたった一行

【別れてくれ】

イブにフラれるってどんだけ!?明日の有休1人で過ごせってか!?
あぁ畜生!奴の顔を思い出しただけで腹立しい!!



『…っ、うぇっ!?なにこれ雪じゃなくて雨!?マジっスか!?』


何てこった!雪ならまだしも雨だよ雨!!
駅の入り口から出た途端図ったように突然の大雨!!
思わず逆戻り!!

ツイていない

本日は非常にツイていない


「何だ、お前傘持ってねーのか?」

『は?』


呆然と真っ暗な空と雨粒を眺めていると、背後から声をかけられ 振り返ると


‐サンタクロースがそこに居た‐


……いやいやドレッドなサンタクロースなんて存在しないってば
何かのキャンペーンかパーティの帰りの一般人に違いない


「ホレ、これ使え!!」

『えっ?』


おもむろに差し出されたビニール傘に戸惑いを隠せない

何のつもりなんだこのサンタのおっさん


「困ってる人を助けるのが、サン・タクローの役目だからな!!」


何か色々間違っている気がするけど、良く見たらこのサンタのおっさんも大分酔っているようだ

若干引いている私に無理矢理ビニール傘を押し付けたサンタのおっさんは、土砂降りの中を猛ダッシュ

サンタのおっさんの姿が闇に紛れて見えなくなってから 改めて自分の手にあるモノを眺めた

住んでるアパートまで歩いて20分
走って濡れてもさほど変わらない

……サン・タクローさんが使えと言うのだからありがたく頂戴します




次の日

二日酔いで痛む頭を押さえながらゴミ出しに行くと、クシャミを連発しているおっさんが居た

何故か見覚えがあるその後ろ姿

思わず声を掛けてしまった


『サン・タクロー?』

「ぶえっくし!…んぁ?」


振り返ったその瞬間 揺れるドレッドヘアー


『昨日…傘を……』

「あー?おーΣおぉーっ!?何でお前ココに居るんだ!!?え?まさか近所か!?おれあそこのアパートの2階に住んでんだよ!!」


サンタじゃないサン・タクローが指差す先は、私が住んでいるアパートの丁度真向かい

偶然?いや、これは……


「これって運命だな!おれんトコで茶でも飲んでけよ!!」

『Σちょ、そんないきなり!?』


私の手からゴミ袋を奪ったサン・タクローは、それを華麗に文字通りダストシュート

近所の奥様方!微笑ましげに見てないで助けて!


「おれはラクヨウ、お前は?」

『えっ?えっと……』

「まぁーいいや、自己紹介は後、後!!」

『Σどんだけマイペース!?』



最低最悪なクリスマスが一変

私の前に現れたサン・タクロー

このまま流されてもいいかなと思ってしまった



「おっ?雪だ雪!!ほわいとくりすますだな!!」



【この後2人はどうなったのか……ご想像にお任せします☆】





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