2人の初恋

□懐かしい出会い
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「船にも乗れたし、アシハラに着くまで自由行動にしましょうか。」
「アンジュ姉ちゃん、太っ腹やなぁ♪」
「……エル?何か言った?」
「え、いや、何でもあらへんで

太っ腹と言う言葉に反応し、エルに黒い笑みを向けるアンジュをおいて、キョウヤ達は別行動をとった。

「さぁてと、何すっかなー。」

キョウヤが船内をうろちょろと歩いていると、突然誰かにぶつかった。

「いって…。何すンだよ、テメェ!ちゃんと前見て歩…け……。」

いつものようにキョウヤがケンカ腰に怒鳴るが、セリフは途中で勢いを無くした。目の前にいるのはキョウヤの知らない人物だが、昔から知ってるような懐かしさが感じられたのだ。

「お前…。」
「あ、すまない。よそ見をしていた。」

そいつは軽く頭を下げると、キョウヤを素通りした。キョウヤはとっさに呼び止めて、質問を投げかけた。

「あ、待て!お前、オレとは初対面だよな?」
「あ、あぁ…。そうだと思うけど…?」
「だよな。悪ィな、呼び止めちまって。」
「いや、いい。」
「そうだ。今暇か?」
「?」

キョウヤはその人物と一緒に甲板へ向かった。

「オレ、キョウヤ。お前は?」
「シャドウ。」
「んじゃ、オレ、シャドウって呼ぶから、お前はオレをキョウヤって呼べな。」
「分かった。」

甲板に出ると、スパーダとリカルドがいた。

「こりゃまた見たとき無い組み合わせがいるなぁ。」
「うっせぇな。」
「ところでスランフィア、後ろの奴は誰だ?」

リカルドがシャドウを指差してキョウヤに言った。キョウヤはさっきのことを説明する。

「船内で会ったんだ。シャドウっていうんだ。」

するとスパーダが冗談混じりにこう言った。

「へぇ。キョウヤと逆で大人しそうだな。」

それに突っかからないキョウヤではなく…。

「ンだとッ!?」
「ヒャハハハ!」

思った通りにキョウヤはスパーダを睨みつけて、スパーダはそれを見て笑った。

「シャドウだったな。オレ、スパーダってんだ。よろしくな。」
「俺はリカルドだ。よろしく頼む。」
「こちらこそ。」

自己紹介が済んだことを確認すると、キョウヤはスパーダとリカルドに聞いた。

「そういや、コンウェイは?お前らと一緒だと思ってたんだけど。」
「ああ。コンウェイはアンジュと一緒にルカの看病。」
「…は?」

返ってきた返事に気の抜けた声を出す。リカルドが一言付け加えた。

「船酔いだ。」
「あ、そーゆーことか。」

キョウヤは適当に納得して、2人から離れた。もちろん、シャドウを連れて。

「ん〜。本当にオレら初対面だよな。」
「そうだが。」
「初対面ってカンジしねー。」

キョウヤは軽く伸びをしながら言う。シャドウはそれに短く返した。

「オレさぁ、ガラム出身なんだけど、お前ってどこ出身?」
「…分からない。今は放浪の旅をしている。」
「へぇ。放浪の、か。いいなソレ。オレ小さい頃から色々問題起こしてよォ。ガラムから出てナーオスで暮らしててさ。けど旅した時ねぇから、やってみてぇな。」
「(問題って…。)」

シャドウは若干目を細めたが、キョウヤはそんなとこに気付かずに話を進める。

「ほら、ガラムってさ、火山の硫黄臭さが最悪じゃん?耐えきれなくてよォ。」
「(確かにあの匂いは酷い。)」
「けど鉱山の方は魔物いるから、戦闘出来んだよな。ぶっ倒してったぜ!いやぁアレはハマるな。」
「(何やってんだよ、キョウヤは。)」
「そしたらさ、鉄鉱掘りの野郎どもが、邪魔だとか異能者はいらないだとか、ウゼェこと言いやがってよォ!」
「…異能者?」
「あ。別に転生者ってワケじゃなくてさ!えっと、その…ほら、オレ人並み以上の体力あったから、そう呼ばれてて!転生者じゃねぇよ!」
「ふぅん…。」

シャドウはキョウヤの焦り方を怪しんだが、一応スルーした。キョウヤはホッと胸をなで下ろす。

「(あっぶねぇ…。異能者捕縛適応法があるのに、バラしたらただのバカじゃん…。)」
「おぉい、キョウヤ!アンジュが呼んでるぞ!」
「Σ!?」

突然スパーダに呼ばれ、キョウヤは跳ね上がった。スパーダの後ろにはリカルドがいる。

「脅かすなよ…。分かった、今行くよっ!」

キョウヤはスパーダに叫び返して、シャドウに向かった。

「ちょっと待ってろよ。」
「うん。」

キョウヤはバタバタと走って行き、船内に入った。キョウヤの代わりにリカルドはシャドウに近寄って、何かを投げた。

「?」

とっさに受け取るとそれは真っ赤なリンゴだった。

「ベルフォルマが食堂からパクってきたものだ。俺はいらないから、良かったらもらってくれ。」

リカルドがスパーダに気付かれないようにシャドウに言った。スパーダは、もう一つのリンゴにかじりついている。

「あ、ありがとう。」

シャドウはお礼を言い、リンゴにかじった。




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