短編

□お隣さん
1ページ/4ページ




清々しいくらいの晴れた午後。もうすぐで5時限目の数学が始まる。私の机の周りで、「数学とかワケ分かんない」と友達が喋っているのを軽く流した。私的には、数学よりも英語の方が分かんないんだけど?そんなこと思いながら空を眺めていたら、5時限目開始のチャイムが鳴った。

友達が急いで席に座ると同時に先生が入ってくる。挨拶を済ませて椅子に座ると、突然、隣から声が聞こえてきた。

「紅さん…だよな?俺今日、数学の教科書忘れたんだけど、見せてくんねぇ?」
「は?」

男子と話したのは、これが初めてだったりする。声の主を見れば、金髪の男子…鏡音レン。苦笑しながら私に話しかけて来やがった。

「…先生に言った?」
「ちゃんと言ったよ。な?頼むからさ、見して?」
「…分かったわよ。」

男子嫌いのせいもあって、私は少し睨み付けてから机をくっつけた。あぁ、多分授業終わったあとに、友達に詰め寄られるんだろうな。ちなみに、男子嫌いなのにコイツの名前を知ってる理由は、その友達のせいだったり。

「あれ、そう言えば、なんで私の名前知ってんの。」
「ん?俺のダチがちょくちょく紅さんの話してるからだよ。あ、俺の名前…」
「鏡音レンでしょ?知ってるわよ。」
「え?なんで…」
「私の友達が、以下略。」
「ふーん。紅さんは男子の話しないの?ほら、えっと…ガールズトーク?」
「男子嫌い。興味ない。興味あるのは戦闘ゲーム。以上。」
「なるほど。」

何を納得したし。普通なら、女子も戦闘ゲームやるんだ、とかからかったりするモンじゃない?…違うか。
ま、取り敢えず、この暇すぎる時間を害なくやり過ごすために、私はノートに落書きさせてもらおうか。











授業終了まで残り20分。長いな。そんなこと思いながらも、落書きレベルじゃなくなったイラストを1つ完成させた。ヤバッ。これ消すの勿体無いわ。
あとでページ破っとこ。なんて呟いたら、隣のヤツに聞かれたらしく。

「…お。結構絵ぇ上手いじゃん。」

なんて、上から目線の感想を言われた。別にあんたに見られたくて描いたワケじゃない。私が横目で睨もうとした次の瞬間、先生が私の名前を呼んだ。

「じゃあ、この問題を紅さん、解いてみて。」
「あ、はい。」

やむを得ず、私は立ち上がり、黒板に向かう。サラッと書き終えてサッサと机に戻った。するとレンの微笑が視界に入った。

「…何。」

単刀直入。理由は分からないが、イラッと来たのでとにかく睨んだ。

「いや、話聞いてなかったのに、よく解けたなって。」
「数学なら問題ないわ。どう見たって基礎問題でしょ。…英語だったら基礎問題でも終わってたけど…。」
「英語ニガテなんだ?」
「…うっさい。黙れ。」

ニヤッと笑うレンが気にくわないので、取り敢えずもう無視しようか。ページを破こうと定規で丁寧に手をかけると、横から紙切れ。さっきから何なんだこの男。ページを破ってから紙切れを広げる。“英語出来ないなら教えようか?”と書かれていた。

「な、いらなi…」

バッと隣を向けば、人差し指を口に当てて笑ってる。なるほど。友達がよくやる手紙か。さっきまで話してたのに今更…。私は雑に書き上げて、隣に放り投げる。するとまた、紙切れが帰ってきた。いつまでやる気だこの野郎。こう言うのは無視出来ない私は、最終的には授業終了のチャイムがなるまで、レンと手紙をしていた。書いた九割がウザいだのしつこいだのの悪口だったけど。






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ