短編
□ハッピーバースデー!
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「そう言えば兇鵺、俺が家にいない間にケーキ作ったって?」
「うっ、何故それを…。」
「カイト縛って脅した。」
「…ご愁傷様だな、カイト。」
「んで、手作りケーキは?」
「え、えーっとね…。」
俺に言われて立ち上がる兇鵺。キッチンの方へ姿を消して、すぐに何かを持って戻ってきた。
「…一昨日にクリスマスプレゼント渡したから、誕プレ何がいいかなって考えたんだけどさ。…結構思い付かなかったから、手作りケーキをプレゼントしようと思って作ったんだ。…不恰好すぎるけど…。」
苦笑いしながら兇鵺がケーキを置く。確かにデコレーションは上手いけど、全体に塗られた生クリームはまだらで、所々、固そうなスポンジが覗いてる。普通なら、顔が引きつってただろうなと思う。
「やっぱりダメだね、料理。わたしニガテだ…。」
「…そんなことないよ。」
しおれる兇鵺に俺は笑って見せた。
「不恰好でも兇鵺らしいし、頑張って作ってくれた兇鵺の思いがこもってる、俺にとって最高の料理だよ。」
「ホントに?」
「うん。」
頷いて見せると、兇鵺の表情がパアッと明るくなり、嬉しそうにはしゃぎだした。
「あ、でも食べない方が…。」
「なんで?せっかくだから食べようよ。」
止める兇鵺を無視して、俺はフォークでケーキを食べる。
「…どう?」
恐る恐る聞いてくる兇鵺。俺はそんな兇鵺に笑って見せた。
スポンジは固くて、生クリームは甘くなかったけど、今までにないくらい美味しかった。
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