【book】戦国BASARA

□とある甲斐の7日間
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「旦那ぁぁぁぁあああああぁぁ!!??」

「「………」」

「…さ…佐助さん……」

ここは武田信玄が屋敷躑躅ヶ崎館の一角にある幸村の部屋。
そこで真田幸村が家臣、猿飛佐助は悲痛なる叫び声をその綺麗な夜空へと轟かせ、嘆き、頭を押さえ始めている。

そんな佐助の悩みの種となっている真田幸村は今…………


2人居る。


そしてそんな2人は同じく1人を取り合うようにして部屋の真ん中で座している。

取り合われ、動くこともままならず、困ったように幸村に従っているのは、あやみだ。

幸村はあやみへの恋心を自覚したばかりなのだが、まだ告白までは至っていない。

あやみもあやみで、幸村よりも少し前から、幸村への恋心を自覚しているのだが拾われ子という身分を気にし、告白にたどり着いていない。

故に、二人はまだ恋仲ではないのだが…

何だこの状態は?

時は約※半時前に遡る。



幸村は信玄の頼みにより、甲斐の過去の※国絵図を取りに外れの倉庫に居た。

その倉庫は基本もう使わないであろうものばかりが散乱し積み上げられている。一見乱雑だが、大量の不要品が綺麗に1つの倉庫という屋根の下に収まっている辺りが凄いと思われる。

そんな倉庫の奥に、過去の国絵図は隠すように置かれている。過去のものとはいえ、少なからず正確さはある故、敵に見つかるのを防ぐためになるべく隠してあるのだ。

そんな国絵図の仕舞われたつづらの上には幾重ものツボやら箱やらが積み重ねられている。不要品だからと言っても保存してあるものなので、幸村はなるべく慎重に箱を下ろしていき、最後の大きめの箱を、最後だからこそ慎重に慎重に、下ろしにかかった…

はずだった。

「しまっ!!」

ガシャンッ!!

何分暗い故に目に付きづらかった小さなツボが幸村の脇をすり抜けて音を立てて砕けちった。

「っゲホッ…、ケホッ…!」

中からホコリ混じりによくは解らないが粉が舞い上がり身にまとわりつく。幸村は慌てて粉を払おうとしたのだが自分に付いたはずの粉はどこにもなく、ただ自分の周りにほんの少し、何にも触れずに落ちていった粉だけが名残のように残っているだけだった。

「??」

幸村は身体に何らかの変化もなかったので、何かの粉だろう、程度で済ませ、国絵図を持ってお館様の元へと走っていった。



影で蠢いた“鬼”を見落として……


【端書き】
※半時・・・今でいう1時間
ちなみに
一時で2時間
一刻(小半時とも言う)は30分を指す

※国絵図・・・今でいう地図
ちなみに豊臣政権の頃、秀吉は全国大名から国絵図を回収した
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