サンタは良い子にやってくる?

□サンタは良い子にやってくる?
2ページ/13ページ



「っくしゅ………さむっ」


余りの寒さにくしゃみで目を覚ます。

ぶるりと震える体を擦りながら、辺りを見回した。


「……は」


一面の白銀。


空にとどきそうなもみの木。


音も存在も全てを無に返すような世界。


「ここ…、どこ……」


俺はこの時小学2年生だった。


「誰かいないの…?」


俺が産まれてすぐの頃、
父さんは亡くなった。

ほとんど父さんの記憶のない俺は、
当然のようにいつも母さんが隣にいた。

頼れる人なんて母さんしか知らなかった。


「母さん。母さん…?」


まだまだ甘えたい盛りで、
ところ構わず甘えては、よく母さんを困らせた。

確かこのときも、母さんをほとほと困らせたんだったと思う。


「母さっ…、母ざんんー…」


白銀のなか。
異物のような俺は、世界から取り残されたようで。
酷く不安だった。


『どうしたのかな?』


そんなときに出会ったのが、
“おじさん”だったと思う。

おじさんは、赤い服を着こんで、白いひげを生やしていた。
ひげのせいで口許がみえないのに。
にっこり微笑んだ顔を見て、優しそうだ、と思ったことを覚えている。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ