サンタは良い子にやってくる?
□サンタは良い子にやってくる?
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「っくしゅ………さむっ」
余りの寒さにくしゃみで目を覚ます。
ぶるりと震える体を擦りながら、辺りを見回した。
「……は」
一面の白銀。
空にとどきそうなもみの木。
音も存在も全てを無に返すような世界。
「ここ…、どこ……」
俺はこの時小学2年生だった。
「誰かいないの…?」
俺が産まれてすぐの頃、
父さんは亡くなった。
ほとんど父さんの記憶のない俺は、
当然のようにいつも母さんが隣にいた。
頼れる人なんて母さんしか知らなかった。
「母さん。母さん…?」
まだまだ甘えたい盛りで、
ところ構わず甘えては、よく母さんを困らせた。
確かこのときも、母さんをほとほと困らせたんだったと思う。
「母さっ…、母ざんんー…」
白銀のなか。
異物のような俺は、世界から取り残されたようで。
酷く不安だった。
『どうしたのかな?』
そんなときに出会ったのが、
“おじさん”だったと思う。
おじさんは、赤い服を着こんで、白いひげを生やしていた。
ひげのせいで口許がみえないのに。
にっこり微笑んだ顔を見て、優しそうだ、と思ったことを覚えている。