さよならの時
□V
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「や、新八君。」
買い物をしている時、後ろから声をかけられた。
心当たりは1つしかない。
それは――
「雅さん!」
「久しぶりだねえ、お妙は元気?」
「相変わらずですね。水影さんは?」
「あたし?あたしは普通だけど…お妙が相変わらずなのは大変だなー、主にゴリラの相手が。」
「いやゴリラって。…あながち予想は間違ってませんが…」
やっぱり雅さんだった。
***
彼女と出逢ったのはつい最近の事だ。姉上が近藤さんをボコっ…いや、あしらっていたら、偶然、ここを通りかかったのだ。
「…あれ?近藤さんじゃん?何してんの?」
「た、助けて雅ちゃん!」
「え?殴って雅ちゃん?やだ、あたしにSの気はないですよ。まあそんなに頼むなら殴りますけど」
「グボッ」
言いながらグーパンチをお見舞いする美人に、姉上も手を止めた。
「あら、あなたは?」
「何でも屋。と言うか最近は真選組御用達の情報屋に成り下がりましたが、まあそんなものを営んでます、雅と言います」
「何でも屋…なら、新ちゃんのライバルじゃない」
「え?」
確かに、万事屋と変わりはないだろう
…が、あっちの何でも屋は儲かっているんだろう。雅さんには僕らにはないお金の匂いをさせていた。
「私は妙と言います。こっちの新ちゃんがメガネで…」
「いや姉上!新ちゃんがメガネって説明になってないじゃないですか!」
「早速だけどこのゴリラ何とかしてくれないかしら?」
「いやスルゥゥゥ!?」
姉上は勝手に雅さんと気絶した近藤さんをどうするか話し込んでいた。
お金なんか無いのに、代金はどうするつもりなんだろう?
……まさか、僕の給料から?
「代金は……新ちゃん?」
まさか的中ぅぅぅ!!
「あ、姉上、僕今月もちょっと…!」
「新ちゃん、姉が頼んでいるのよ?どうにかなさい?」
「いやどうにかって言われても…!」
「新ちゃん、金●玉はどうして2つあるかわかる?」
「それ伏せ字になってませんし!売りませんよ!?」
姉上に必死に抗議していると、思わぬ助け船が入った。
「まあまあ、今回は新ちゃん君とお妙の美しさに免じて、初回限定大出血サービスってことでタダにしますよ」
「ほ、本当ですか!?」
思わず聞き返すと、雅さんは優しく笑ってくれた。
「どうせ真選組には行く用事があるしね。ついでにこのゴリラを殴っ……連れてくくらいお安いご用だよ」
「ありがとうございます!」
物騒な言葉が聞こえたような気がしたけど、僕の玉には代えられない。
近藤さんには悪いと思ったけど、聞こえないふりをさせてもらった。
「じゃあ、あたしは行くから
またね、お妙と…えっと」
「新八です!」
「…そう、新八君。ばいばい」
雅さんは近藤さんを担ぎ行ってしまった。
「…なんだか、不思議な雰囲気の人だったな」
また会おう。その日が楽しみだった。
「(……あれは…彼の…)」