さよならの時

□Y
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「……またか」

明け方。
橋の上では真選組により、【後処理】が行われていた。

「今回で12人目
被害は拡大するばかりですねィ」

沖田の目の前にはブルーシートで覆われた浪士の死体があった。
見慣れてしまった赤に2人はため息をつく。

「ったくだ
…一体誰が…」

相次いで起こる浪士襲撃事件。
これには鬼の副長と呼び名が高い土方も頭を悩ませていた。

「被害者の共通点は攘夷志士ってだけ。
攘夷党も人種も別々ってなるとやっぱり辻斬りですかねィ」
「……」

沖田は気づいていないようだが、土方にはもう1つ共通点があると知っていた。





「(攘夷戦争の経験者か…
しかも、どいつもこいつも名を馳せていた英雄ばかり)」



攘夷志士の中にはあの戦争を体験していない者も多い。
ならば何故攘夷志士になったのか。


それは
攘夷戦争経験者の存在が大きいからだ。


戦争経験者がその壮絶さを語り、それに惹かれ攘夷志士となるのだ。
そうなると英雄と呼ばれた人物のが人を集めやすいのは火を見るより明らかだった。
例えば桂だったり高杉だったり。


「……」
「土方さん、何ボーッとしてんですか。早く行きやすよ」
「…あぁ」

しかし攘夷戦争経験者を狙う理由はわからない。

そして、








「(…何であの女はそんな事がわかるんだ)」








被害者は攘夷戦争の経験者。

それを土方に教えたのはあの女だ。
彼女は真選組でも分からなかったことをあっさりと導きだし、他にも様々な仕事をこなしていると聞く。

「……あの女、本当にただの何でも屋か?」

彼女への不信感と疑惑ばかりが土方のなかで渦巻く。
彼女の存在は、自分達にとって善か悪か。


***


「あたしやユリはさ
ほら、昔から何かと疎まれてたじゃない?
こんな所になんでいるんだ。とか邪魔なんだーって。
けど、そう言った奴から死んでった
…ユリはもう居ないけど、あたしは生き残った
だから、強いって思った
違うかな?そう思うのは
強いはずの男が死んで、弱い弱いと言われ続けた女が生き残った
あたしの中で、
それだけが自分の強みだった


ユリを殺したあたしには他に何もない
…あたしは、ユリを殺したあたしの歪な強さで戦う。

あんたとは違う、自分1人の力で、


















………全部
護りきってやるよ、晋助。」

















野獣の様に金眼を光らせ言う彼女に、
隻眼の男は喉を鳴らして笑った。

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