さよならの時

□W
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――万事屋にて


「新八なにアルかそれ
ついに眼鏡がオカしくなったアルか?」
「眼鏡がオカしくなるってなんなの」

帰ってきた新八が持つ大量の紙袋に神楽は早速興味を示す。
強引に奪い取り、中の箱を見て驚いた。

「ケ、ケーキ!?
なんでケーキがこんなたくさん!?」

紙袋の中には神楽が思わず標準語に戻ってしまう量のケーキが入った箱があり、開けると色とりどりのケーキが満ちていた。

「神楽ちゃん、標準語になってるよ」
「あっヤベッ
…でも、こんなたくさん本当にどうしたヨ?」

アルアル娘に戻りフルーツケーキを取り出しながら神楽は聞く。

「知り合いの人に貰ったんだ、銀さんは?」
「苺牛乳が俺を呼んでいる!とかワケわからん事言いながらどっか行ったアル」

呆れたように言う神楽に新八もやっぱりか、なんて言いつつ頷く。
入りきらないケーキを無理矢理冷蔵庫へいれ自分も1つ食べようと皿に取る。

「でも新八にケーキ屋の知り合いがいるとは思わなかったヨ」
「ケーキ屋って言うか…変わった人なんだよね、少し。」
「変わってる?」

早くも2つのケーキを完食した神楽が聞き返す

「なんて言えばいいのか迷うけど…
…雰囲気は銀さんにちょっと似てるかもしれない」
「銀ちゃんに?ならロクな奴じゃないアルな」
「いやいや、雅さんはしっかりした人だよ」
「雅って、まさか女アルか!?」

神楽がそう言ったところで、玄関が開く音がした。

「銀ちゃんヨ
あ!これ隠さないと全部食べられてしまうネ!ぱっつぁん急ぐアルよ!」

バタバタとケーキをしまう神楽を尻目に、新八はチョコレートケーキを口に運んだ。





――とある大橋にて――





「グハッ!!」

男が1人、夜道に倒れていた。
その体は血で赤黒く染まり、眼前の敵を強く睨み付けていた。

「き…貴様ァァ!!」

大声で叫ぶが、敵は苦笑いを浮かべながら刀を振り上げた。

「――悪いね。あたしも血生臭いのはあんまり好きじゃないんだけど、こうでもしないと無理みたいだから」
「クソッ…!」

悔しげな男は刀で対抗しようとするが、敵はそんなことで動じるほどヤワではなかった。




「ごめんなさい」





敵は一言そう告げ、
男が何か言う前に

無情にもその刀を振り落とした。



***



「こうでもしないと、
気づいてくれないんだもん。
あたしも嫌だけど仕方ないでしょう?」

言いながら、刀を引き抜く。
血が着流しに飛んでしまったが、気にする程度ではないだろう。

「……正しいのかなあ」

人は自分と屍しかいないにも関わらず、思わず呟いてしまう。
それほど、この行動に疑問を持ち始めていた。
自分の意思で始めたことだが、他にも方法があったんじゃないか。
そんなことを、考えながら刀をしまう。

「……ちがう。
他に方法があっても、あたしはこれしか出来ないんだよね、きっと。」

自嘲気味に笑い、橋を後にした。


















「…エクレア、食べればよかったなあ…」
 

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