short story

□君、想う。
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「優嘉ちゃん」


「…あれ、総司くんだ」


「そうだよ、
君がさみしいさみしいって言うから、会いに来ちゃった」


「ごめんね」


「君が寂しがり屋なのはいつもの事でしょ?気にしてないよ」



「夢でも、会えてうれしいよ」



「…そうだね、僕も嬉しい」


「ねえ、総司くん」


「だめだよ」


「……なにも言ってないよ?」



「死にたいなんて、君の口から聞きたくないな」



「……。」



「優嘉ちゃん、これから新しい時代が来るんだ」



「……新しい時代?」




「そう。
武士が必要のない時代、僕は君にそれを見てほしい」



「そんなの、」



「泣き虫だなぁ
……僕は、君に生きてほしい
生きて、僕が…いや、僕たちが見ることができなかった時代を見てほしい」


「…やだよ……さみしいよ…」


「またワガママ言って…
しょうがないなぁ、はい。あげる。」


「…ゆびわ?」


「シロツメクサで作ったものだけどね

…言ったよね、僕の心は君のものだって

大丈夫。

僕は、ちゃんとここにいるよ


いつだって、
君のそばにいるよ―――































――――総司、くん」



目が覚めた
彼の夢なんて、初めて見た

まるで本当に目の前にいるみたいだった

夢じゃないみたいだった



「…ぁ…れ…?」




総司くん
大好きだよ





「あは…なんで、私、指輪…なんて…」



涙が溢れる

零れ落ちた雫が、
薬指の白い花を濡らした


















「……もう、死にたいなんて言わないよ」



さみしいけど、そう付け足して起き上がる




泣いてなんていられない




これからは、
やることがたくさんあるんだから


両頬を叩いて気合いを入れ、扉を開ける



ビュウ!!



「きゃっ…」





強い風が吹き、思わず目を瞑った






















"がんばれ"



















「…ありがとう、総司くん」







小さな指輪をそっと握り、頬が緩んだ





外は、美しい桜がヒラヒラと舞っていた







end


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