世界の終わりに/イナイセカイ

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「ふぅ……」


帰宅の途につきながら、ため息が漏れた。


このところ色々ありすぎだ。


ルパン三世が存在して、それを追いかけて時空管理局がやって来て、ルパンを元の世界に戻す手伝いをしろと言われて。


夢だというなら納得できるような出来事が、現在進行形で行われている。


(楽しい)


今ではそう思っている自分が、確かにいた。


コツ、コツ、と。


背後に聞こえた足音に、ふと我に帰った。


薄暗い帰り道、私と同じペースで足音はついてくる。


私の足音が反響して聞こえているだけだ。そう思い、家路を急いだ。


けれど、背後から聞こえる足音は私の足音とは少し違う。


それに気付いた途端、背筋がヒヤリとした。


早歩きで少し速度を上げると、後ろの足音も早くなる。


少しずつ距離を詰められている気がして、私は走りだした。


幸いにもここは曲がり角の多い住宅街。私は右へ左へと角を曲がって足音を振り切った。


足音が聞こえなくなったのに安心して、ゆっくりと自宅へ向かう。


カバンから鍵を出そうとして、足を止めた。


家の前に人影がある。


後退りしようと半歩足を引いたところで「こんばんは」と聞き慣れた声がした。


その声だけで誰だか分かった。


人影がこちらへ歩き出す。それにつれて、街灯がその人を浮かび上がらせてゆく。


赤いジャケット。面長の顔。


瞳は黒さの中に暖かみがあり、唇はいたずらっぽく口角が上がっていて、微笑みにも見える。


「駅前の大画面で宝石展の事を喋ってたろ。あんまりに可愛かったんで会いにきちゃった」


彼はゆっくりと私に歩み寄った。


背が高く、その身長に見合うだけ肩幅もしっかりしていたけれど、全体の印象はシャープだ。


「初めまして…… じゃないな。久しぶり。バス停で会って以来かな」


「ルパン……」


「やっぱり。君は俺のことを知ってるんだな」


ハッとした。言葉が出てこない。


「変だと思わないか? 犯行現場にカードを残してもニュースに俺の名前は出ないし、とっつぁんも来ない」


そりゃそうだろう。


ルパンが実在したというデータがこちらの世界に作られるまで時間がかかるとジョンが言っていた。


それに銭形警部はこの世界には存在していない。


「…………」


「ダンマリか。俺は君とお喋りしたくって会いに来たってのに」


ルパンは大袈裟に肩をすくめた。


それから、スウと目を細めて私を見る。鋭い視線が私の視線を捕らえて離さない。
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