夕陽の用心棒
□苦い…
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コンクリートに囲まれた室内射撃場。
綾は銃を握った右手を真っ直ぐに伸ばし、的に照準を合わせていた。
撃鉄を起こし、銃口の先にルパンの顔を思い浮かべる。
もう長い時間、綾はその姿勢のままだった。
両親を殺したルパン一族の一人。
その憎い仇の顔を標的にしようとするのだが、思い出すのは屈託の無い表情ばかり。
私は、何も知らなかった。
私をずっとその顔で騙してきたの?
私を目の前にしてもそんな風に笑える程、簡単に隠し通せるものだったというの?
腕が下がりかけ、綾は慌てて修正する。
それでも、その銃から弾が発射される事はなかった。
銃口の先でルパンとの睨み合いが続く。
と、ふいに横から手が伸びて銃身を掴まれた。
「もう、よせ」
綾はハッとして声の主を振り仰いだ。
銭形が無表情で綾を見つめていた。
綾はゆっくりと息を吐き、静かに銃を置いた。