金色ウサギと赤い竜

□第2話
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部屋に戻った綾はPCを立ち上げ、フルボリュームでオペラを流す。

さすがに今はヒップホップを選ぶ気にはなれなかった。



「次元、次元。聞こえる?」

『…… 綾。無事か』



呼びかけるとすぐに返事が返ってきた。



『すぐに助けに行くから待ってろ』

「ごめんなさい、勝手な行動して…… でも私よりトフィーを助けたかったの」



トフィーがルナトーンだと信じているからこそソーントンも丁重に扱っていたが、もしただのウサギだったとしたら。

そしてそれがソーントンに分かってしまったら。



「あっさりと処分するなんて言った人たちだもの、普通のウサギだったら、きっとすぐに殺されてしまうわ」

『だがお前はどうなる。ウサギがいなくなったと分かればお前の身が危険だ』

「ソーントンには何か考えがあるみたいなの。私をプルーデンス王女に仕立てて、クラウス王子に会わせるつもりよ。それが終わるまで私は大丈夫だと思う」



次元は黙り込んでしまった。

遠くからルパン達が何か言っている。

綾は通信機に耳を寄せた。



『座れよ次元。そんなにグルグル回ってたらね、お前そのうちバターになっちゃうぜ』

『ルパンの言う通りだ。お主の気持ちも分かるが、急いては事を仕損じると言うではないか』



ややあって、通信機から大きなため息が聞こえた。



『わかった。ソーントンの出方を見よう』

「その方が良いわ。もしもトフィーが本当にあなた達の仲間なら、元の姿に戻すヒントを見つけてあげたいし」

『くれぐれも無茶はしないでくれ』

「走ってる列車から真ん中の車両を抜き取るより無茶なことって、ある?」

『…… ねぇな』



次元がフッと笑った。



「トフィーはどうしてる?」

『ルパンが世話してる。今は餌でご機嫌を取ろうとしているところだ』



耳を澄ますと、ルパンがトフィーに話しかけているのが聞こえた。



『あれっ、食べねーの?』



カランと何かが倒れる乾いた音と、慌てたルパンの声。



『どーして皿を蹴飛ばすんだよ。俺が不満かぁ?』

『ははっ、嫌われておるようだな』



五エ門が笑えば、



『犬猿の仲ってのは聞くが、ウサギも猿が苦手とは知らなかったな』



と次元も軽口をたたく。

綾は吹き出してしまった。



「トフィーは有機栽培のアルファルファと無添加のペレットじゃないと見向きもしないのよ」

『えーっ。グルメだなぁ』



ルパンはブツブツと文句を言っている。



『あのウサギ、不二子だな』

『あぁ、違ぇねぇ』



五エ門と次元が呟くのを聞いた綾は、また吹き出した。
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