Clap(またはぽちっと)の記録
□君の声でそのセリフを
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〜五右衛門に読み聞かせをお願いしてみた〜
「本、読んで」
彼女が差し出した本を見つめる事数秒、五右エ門は渋々手を出して受け取った。
「しおりを挟んであるから、そこからね」
「承知」
さっさと寝てくれと願いながら、五右エ門は本を開いて目を落とした。
一行目を目で追うと同時に動きが止まる。
「これ、本当に読むのか……?」
「うん。早く」
彼女の表情がこころなしかイタズラっぽく笑って見えるのは、気のせいだろうか。
「えー」
仕方なく五右エ門は読み始めた。
「き、君がどんなに…う、美しいか言ったか、な。さぁ、この手をとるんだ、は…は、はにーすいーと……」
彼女は閉じていた目を開け、ベッドのわきに腰かけている五右エ門を見上げた。
五右エ門は気の毒なほど真っ赤な顔で、口ごもりながらページをめくっている。
「君は僕の命、あああ、愛だ。君にむ、夢中なんだよ。どれだけ君をあ…愛、しているか、証明するチャンスをくれないか」
「五右エ門……」
彼女が口を開いた。
「コメディにしか聞こえない」
がっくりする五右エ門だった。
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