王女とボディガード(仮)
□第3話
1ページ/14ページ
王女としての公務の日々はあっという間に過ぎ、例のお見合いの日がやってきた。
用意されたブルーのドレスはテンションが上がるほど素敵で、滑車の上のハツカネズミみたいに鏡の前で何度もターンした。
次元がどんな反応をするのか早く知りたくて勢いよくドアを開ける。
いなかった。
「あぁ、とてもよくお似合いですよ」
ソーントンさんが目を細めて言う。
その言葉、あの人の口から聞きたかったのに。
「次元さんはすぐ戻ってまいります」
キョロキョロと部屋を見回した私に、何を察したのかソーントンさんが言った。
「時間がありません。レセプションの打ち合わせをいたしましょう」
打ち合わせというより、ソーントンさんが一方的に細かい説明をした。
来賓客の簡単なプロフィール、王子への呼びかけ方、避けたい話題を振られた時のかわし方、などなど。
お芝居より覚えることが多くてびっくりする。
雄弁は銀、沈黙は金。
ボロが出ないよう、なるべく口を閉じていることにしよう。