金色ウサギと赤い竜

□第1話
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「ただいま」



帰宅した私を待っていたのは、ソファで悠然とくつろぐウサギだった。

金色の毛並みを持った、珍しいウサギ。

ユニシア国の王女の身代わりを務めた時に拾った。



「トフィー。また脱走したのね?」



たしなめるように言っても、トフィーは知らん顔だ。

ケージに入れても、いつの間にか抜け出してソファに戻っている。



「元の飼い主の所もそうやって逃げ出したんでしょう」



苦笑しながら、私はトフィーの横に腰掛けた。

傍らに、黒いプラスチックの破片が置かれていた。



「ねぇトフィー。それ、一体何なの?」



そのプラスチックは2、3センチほどの小さな物で、トフィーの毛の間から転がり落ちてきた物だった。

トフィーはこれを片時も離そうとせず、常に自分のそばに置いている。


私が手を伸ばすと威嚇して噛みつこうとした。

どうやらとても大切な物らしい。



「ハイハイ、誰も取り上げたりしないわよ」



私はプラスチック片を諦め、コーヒーを入れようとソファを立ち上がった。



『もういいだろう。不二子の事は放っておけよ』



唐突に聞こえてきた声に、私はビクリとして動きを止めた。

今の声、一体どこから聞こえてきたの?



『子供じゃあるまいし、気が向いたら連絡してくるさ』


『けどよー……』


『チッ、諦めの悪いヤツだな』



聞き覚えのある低い声。



「次元? 次元なの?」



聞こえてきた方へ歩み寄ると、トフィーが顔を上げた。

プラスチック片から息を呑むような音がした。

そして数秒の沈黙のあと、



『誰だ?』



と、問いただす声。



「私よ。ユニシアで……」



最後まで言う必要はなかった。



『綾……』



懐かしい声が、私の名を呼んだ。






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