金色ウサギと赤い竜

□第7話
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「もう、どうなるかと思ったわ。このままずっとワインにも宝石にも縁のない生活なんて、とても耐えられないもの」



不二子が安堵のため息をつくのを、次元は仏頂面で眺めていた。

『レディにこんなカッコをさせておくつもり?』

と裸の不二子に無理やりジャケットを取られて、面白くなかったのだろう。



「あんな目にあっても、所詮不二子は不二子か」

「何よ、どういう意味?」



嫌な人ねと次元をひと睨みしてから、不二子は綾に向き直った。



「トフィーだった時は世話をありがとう。言葉は分からなかったけど、背中を撫でるあなたの手はいつも優しかった」

「私たち、てっきり言葉が通じてると思ってたわ」

「雰囲気で理解していただけよ。そうだ次元、あなた、いたいけなウサギに向かって『目つきの悪い性悪』みたいな事を言ったでしょう!」

「…… ちゃんと通じてるじゃねぇか」

「覚えてらっしゃい。あなたがカラスになっちゃっても、助けてあげないから」

「なんで俺がカラスなんだよ」



綾はクスクス笑っている。

金髪が揺れ、きらきらと光った。



「おーい、不二子ぉー!」



大きく手を振りながらルパンが駆けてきた。



「ルパン! 無事で良かった」



綾は嬉しそうな声を上げて彼の首に飛びついた。



「うんうん。綾も無事で良かったよ」



言いながらも、視線は不二子に釘付けだ。

なにしろ、不二子は素肌にジャケットを羽織っているだけなのだ。

ルパンは彼女の太ももから目が離せない。



「それで、宝石は? ルナトーンとソルライトはどうなったの?」



不二子が訊ねた。

ルナトーンとソルライトは『対の石』だとクラウス王子は綾に言っていた。

一方の石によって姿を変えられた者は、もう一方と引き合わせる事で元の姿に戻ると。



「人間が元の姿に戻ると、宝石たちも元の場所に戻るそうよ。宝物庫の奥に」



綾が答えると、不二子の目がキラリと光る。



「やめとけ、不二子。次は何があっても手は貸さねぇぜ」



次元は釘をさすのを忘れなかった。

隣に立つ綾の肩を抱き寄せる。



「綾をこんな目に合わすのは、もうゴメンだからな」



ボロボロのドレスで煤だらけの綾を見ると、不二子もそれ以上は何も言えなかった。



「分かったわよ」



肩をすくめ、大きくため息をつく。



「行きましょ、ルパン」



歩き始めた不二子のあとを、だらしなく鼻の下を伸ばしたルパンがついていく。

そんな二人と、次元たちを交互に見た五エ門は、



「ま、待ってくれ。拙者も行く」



と、慌ててルパンのあとを追った。
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