Lupin(Short)

□風邪ひくぜ
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すっかり日が落ち暗くなった道を、フィアットが走っていく。

「少し…スピード出しすぎじゃない?」

綾は運転席のルパンを見やった。

ルパンは無表情で、黙って前方を見据えている。

いつもと違う彼の様子に、綾は首を傾げた。

「くしゅん」

冷たい夜気に、綾は小さなくしゃみをした。

バサッ。

運転席から赤いジャケットが飛んでくる。

「風邪ひくぜ」

「あ、ありがと」

ルパンのジャケットをはおりながら、ちらりと横を見やると、彼はやはり無表情でハンドルを握っている。

「あのぉ。なんか、怒ってます……?」

「怒ってますよ? よりによって、あんなオジサンに引っ掛かりやがって……」

綾は思わず吹き出した。

「ルパンだってオジサンじゃない」

「一緒にすんなっつーの!」

ルパンが急ハンドルをきった。

遠心力に振られた綾は運転席へと倒れ込み、ルパンにしがみつく。

車が停まった。

「ルパン……?」

体を起こそうとしたが、ルパンが肩を抱いたまま離さない。

「綾は俺のもんだ」

「俺のって…ンじゃ、不二子さんは?」

「不二子も俺の!」

「呆れた」

綾はため息をついた。

「オモチャを独占したがる子供みたい」

「何とでも言え」

肩を抱いたルパンの手に力がこもる。

「とっつぁんには渡さねぇ。泥棒が大事なもん盗まれるなんて、冗談じゃない」

綾はクスクス笑ってルパンを見上げた。

「それ…もしかして、やきもち……?」

「悪いか」

微笑みの名残を口許に残して、綾はルパンの体に両手を回した。

「悪くないよ、ルパン……」


おわり

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