Lupin(Short)

□あんた達、だれ?
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一瞬、驚きで言葉が出なかった。

二人組。

バーテンダーのように黒いパンツに黒いベスト。蝶ネクタイ。

そして顔には、蝶型のお面。

「えーっと……」

ルパンはおそるおそる話しかけた。

「あんた達、だれ?」

すると二人はコミカルに動いたかと思うとビシッ! とポーズをきめ、

「怪盗農林1号参上!」

目も光り、歯も光る。

自分で怪盗って言うんだな……。

どうリアクションしたものか困ったルパンは、あいまいに笑って見せた。

「なんで笑ってるの、この人」

「さぁ。私に聞かないでよ」

「コルホーズ1号の方が良かったかしら?」

あまり変わらんじゃないか。

突っ込みたいのをかろうじて堪えて、ルパンは再び話しかける。

「それで、農林1号ちゃんはここで何してるのかな?」

「えぇ、ちょっと“ダイヤのしゃもじ”を盗みに」

うふふと笑った農林1号。

ちょっとそこまで買い物に、とでも言っているかのような口ぶりだ。

「そう言う貴方は何をしてるんです?」

「俺? 俺もダイヤのしゃもじをね……」

「あら! 奇遇ですわねぇ!」

農林1号は嬉しそうにパチン、と手を叩いた。

相方が呆れたようにため息をつく。

「姉さん、嬉しそうにしないの! 同じ物狙ってんのよ!?」

「あらそう。じゃ、半分こにしません?」

おいおい。
ルパンはコケそうになった。

「あのね! ダイヤは簡単に半分こできないの!」

相方が叫んだが、本人はたいして気にしちゃいなかった。

「困りましたねぇ。ジャンケンでもします?」

そう言ってルパンに笑いかける。

がっくりとうなだれる農林1号の相方に、ルパンは心から同情した。

「2号ちゃん大丈夫…? 苦労するねぇ」

すると相方はガバッと顔を上げてルパンにくってかかった。

「2号ちゃんって何ですか! 人を愛人みたいに!」

「だって、あっちが農林1号なら、こっちは2号でしょう?」

「違います! 2人で農林1号なんです!」

「あー、そー」

言い返す気もなく、ルパンは頷いた。

「それにしても困ったわ。私、ダイヤのしゃもじで炊き込みご飯するって言っちゃったから……ねぇ、今回はあきらめてくれません?」

農林1号はさらっと言った。

「代わりにこれ、あげますから」

これ、とは隣に展示されていた埴輪だった。

「ほら、抱き枕にちょうど良いですよ?」

ニコニコと埴輪を差し出す彼女に、ルパンは怒る気にすらならない。

もうダイヤのしゃもじなんてどうでもいいやと思いかけた時だ。

「ルパン! 逮捕する!」「農林! 神妙にしろ!」

入口から叫び声がした。

「うわ、とっつあんだ!」「やだ、テンチョーさんだわ!」

ルパンも農林1号も慌てて窓から外へ飛び出した。

「ルパンさーん! また会いましょーねぇ!」

農林1号の声が、夜の闇に響き渡った。

絶対会いたくない。

ルパンは強くそう思った。


終わり。

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