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□吠舞羅家の一日
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~IZUMO~
BAR HOMRAにて
「今日もええ天気やなぁ〜…」
カウンター内でお気に入りのグラスを磨きながら、一人呟く。
いつもは不良息子達で騒がしい店内も、日曜の早朝のため、今は自分以外誰もいない。
「休日の朝早くから自分の店でゆっくりグラス磨いとるとか」
ほんま俺、幸せや〜…
しかも静か。
悪ガキ共おらんと、こんな静かなんもんなんやな…忘れとったわ…
せやな…ここは神聖なるバーや。
ほんまは静かなんが当たり前なんやもんな…
音をたたせないように、そっとグラスを置き、カウンターに項垂れる。
俺の好みのものばかりで揃えた店内。
曇りガラスの窓から射し込む優しい陽の光に、心が穏やかになる。
「いつもなぁ…こんくらい静かやったらなぁ「草薙さぁぁぁぁあん!!!!!」
バン!と勢いよくドアが開くと同時に、ものすごい勢いで店内に入ってきたのは
「…八田ちゃん…」
吠舞羅の切り込み隊長、八田美咲だった。
そして突然の美咲の登場により、出雲の静かで優雅な休日は幕を閉じた。
俺の休日…(泣)
「八田ちゃん、頼むから店に入ってくるときはもうちょい静かに…「草薙さん!」
出雲の言葉など耳にいれず、美咲はカウンターに勢いよく手をつくと
「折り入って、話があります。」
今にも泣きそうな顔で出雲に詰め寄った。
「な…なんや八田ちゃん、そないな顔して…」
突然の八田の来訪にも驚いたが、今まで見たこともないような八田の様子に、出雲は驚き戸惑った。
八田ちゃんの泣きそうな顔なんて初めて見たわ…
「いきなりすんません、草薙さん。…でもこんなこと話せるの草薙さんくらいしか思い付かなくって…いや、話っていうか相談なんすけど…」
「お、おう。せやからどうしたん。」
八田にしては珍しくピンチらしい。
その深刻そうな表情に、こちらまで飲み込まれてしまいそうになる。
八田はきゅっ、と口をつぐんで俯いてしまった。
しばらくしてから顔を上げ、その真っ赤な目を出雲に真っ直ぐと向けてから、ゆっくりとその口を開いた。
「俺…俺…猿の子供が」
できちまったかも…しれないんです。