となりの怪物くん

□夏の夜空の贈り物
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「神崎サン、オレと付き合わねぇか」


「………はい?」


高校二年の夏の夜、プライドの高い王子様に告白された。

彼は山口賢二くん、通称ヤマケン。
ヤマケンくんとは同じクラスのハル経路で知り合って仲良くなった。

勉強のことでもそれ以外のことでも話が合って、いい友達だと思ってたんだけど…


そもそもなんでこんな展開になったんだ?



* * *


時は遡り放課後。
あさ子ちゃんに誘われてハルん家のバッティングセンターに行った。


「あ、みっちゃんさんお邪魔します!」


「怜香ちゃん、いらっしゃい。みんなもう集まってるよ〜」


「まじすか、了解です」


入口でみっちゃんさんと軽く挨拶を交わして中へ進むと、すぐにあさ子ちゃん達の姿が目に入った。


「あっ!怜香ちゃん到着ですっっ!」


「おー、来たか神崎!おせーぞ!」


「えっ、ごめん…?」


これでも授業終わってすぐ来たつもりなんだけど…
まぁ細かいことはいっか!
とりあえず座る場所…


「怜香っちゃぁあん!!」


「待ってましたぁあ!!」


「〜♪」


「きゃっ!?ちょ、危な…っ!」


海明の3バカが飛びかかってきてバランスを崩す。

後ろに倒れたら痛いだろうな…と覚悟を決めていたら、


「…おいお前ら、危ねーだろ」


見事にヤマケンくんにキャッチされた。


「てめぇヤマケン!邪魔すんなよ!」


「してねーよ。さっさと離れろ」


あたしの後ろから肩を支えてくれたヤマケンくんは、そのまま長くてスラッとした足でマーボくん達を蹴っ飛ばした。


「おぉっ…長いね、足」


素直に羨ましくて後ろのヤマケンくんを見上げて言うと、まぁな、という返事。
否定しない自信満々なとこが君のいいところだよ、うん。


「ありがとヤマケンくん。あのまま倒れてたら流血沙汰だったよ多分。」


「ふっ…大袈裟だろ」


「…ちょっと盛った」


怖そうなだなーっていう第一印象だったけど今ではよく笑ってくれるようになった。普通にいい人だと思う。


「てか今日人数多いね。ヤマケンくんもあさ子ちゃんの先生やるの?」


「?…なにそれ」


あ、そんなつもりはないんですね。
ただバッティングしに来ただけかな?


「オレらは夏目ちゃんと怜香ちゃんに会いに来ただけだよー♪」


「あなたたち、夏目さんの勉強の邪魔はしないように。」


「んだよガリ勉〜、ツレねぇなぁ」


雫ちゃんの鋭い一言に文句を言いつつ暇だと言ってバッティングしに行った。


「…あれ、ヤマケンくんは打ちに行かないの?」


一人ソファに座ったままのヤマケンくんに声をかける。


「…勉強手伝ってやってもいーけど?」


おぉ!
なんだかんだ優しいんだよねぇこの人は…!
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