となりの怪物くん
□甘党
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今日は優山とお泊まりデート!
優山の家は色々と問題があるらしいから、あたしの家で。
「優山、見て見てーっ!葛餅作ってみたよ!」
そう言ってお風呂から上がってきた優山に差し出す。
「えっ!?わ、ホントだ…怜香が作ったの?」
「あたししかいないしっ!」
そう、今日は両親が出張で帰ってこない。兄弟がいないあたしはそんな時はいつも一人ぼっち。
「わぁ…すごいっ、食べていい?」
「もちろん!」
目を輝かせながら問いかけてくる優山に笑顔で答えると、いただきますっ!と、きな粉のかかったお手製葛餅を口に含んだ。
「どう?」
「美味しいよ…!オレが風呂入ってる間に作ったの?」
「そうだよっ」
得意気に言うと、優山はフォークで刺した葛餅をあたしの口の前に持ってきた。
「ほら、怜香も食べてみなよ!あーん…」
そんなベタな事をされて顔に熱が集まるのを感じながらも口を開き、差し出された葛餅を口に入れようとしたら
ぱくっ…と、あたしの唇が食べられた…。…ってゆーかキスなんだけど…。
「んっ!?っっ!」
最初から口を開けていたから簡単に舌の侵入を許してしまった。巧みに舌を絡ませてくる優山はきな粉の甘い味がした。
「っ…ふ、」
「〜っ…!ん…ふぁ…」
でもなんの心構えも無しにそーゆーことされると…っ
「ぁっ…!」
身体の芯から溶けていくようにじわじわと力が入らなくなって、膝かっくんされたかのように、カクンと床に崩れ落ちた。
そんなあたしの姿を優山は楽しそうに見ている。涙目になって見上げると、ゆっくりしゃがんで片手に持ったままの葛餅を再び差し出した。
「ごめんごめん、ちょっと意地悪しすぎちゃったかな?」
ニコニコといつもの笑顔で満足そうに言う優山。申し訳なさゼロですね、わかってますよ…。
何か悔しかったけどこの人には勝てないってことは理解してるから諦めて、今度こそ葛餅を口に含んだ。
…さっきの優山の味だ…と思うとまた顔が熱くなる。
「オレの味した って顔だね?」
クスクスとからかう優山。この人はエスパーなんじゃないかって度々思うんだけど。
「っ!もうあげないっ」
これ以上こんな恥ずかしい顔見られたら茹で上がっちゃう。結構まじで。
「え!ごめんって、ちょうだい!」
あたしが皿を取り上げると慌てて…ってゆーか必死で取り返そうとする。…そんなに気に入ってくれたってことかな?
「…はい、いいよ」
もう一度優山の手に皿を預けると、子供みたいに喜んでいる。
…かわいい…
葛餅を食べ終わってからは部屋でのんびり。
「怜香〜」
「ん?」
突然優山に抱き締められる。けどよくあることだからもう慣れちゃった。…ってゆーのは、いちいちビクッ!って身体が強ばったりしなくなったってことで、心臓は未だにポーカーフェイスという言葉を知らない。
「好きだよ〜」
「あたしもだよ」
部屋にいると優山はよく甘えてくる。キスとかはしてくるけど、それ以上のことはない。付き合って3ヶ月経つのにないって…やっぱあたしが高校生だから?あたしみたいなちんちくりん抱く気も失せるとか…!?
「……怜香?」
「…なに?」
またエスパーされたかな。
…いや、違う。
「何でそんな寂しそうな顔してるの?」
「え?どこが?」
顔に出てたんだ。あー、ホント子供だ。早く大人になりたい。
「隠さないで」
…って言っても、何て言えばいいの?
「優山とえっちしたいです。」って?痴女かっ!!
「…………」
「…当ててみようか?」
「え…っ」
あたしが黙り込んでいると優山が口を開いた。
「3ヶ月も付き合ってるのにキス以上のことがないから不安…ってとこかな?」
「っ!!」
この人は本当に人の心を読めるんじゃないかと思った瞬間。それともあたしがわかりやすいのかな…?
「当たってる?」
「……うん…」
…何この恥ずかしさ……。
あたしはもう終わりだ…って心の中で嘆いていたら、背中に柔らかい衝撃が。
「ほんとはいつでも、こうやってオレのものにしたいって思ってるよ」
目の前には優山の顔。その背景は…天井。あぁ、これが世に言う 押し倒されたってヤツか。
「じゃあ…何で?」
「…大切すぎるから。オレ多分怜香のこと泣かせちゃう。」
「いいよ、泣かせても。優山だから…」
咄嗟にそんな言葉が出ていた。大切に思ってくれて嬉しい、だからこそそんな優山に全て委ねたい。
優山は一瞬びっくりしたような顔をして、すぐあたしの上から退けた。
…あれ?
「ゆ、優山…?」
「今日はダメ…ほんと、ヤバイから…」
切羽詰まったように言って、背を向けて布団に入ってしまった。
…どうしちゃったの!?