parallel

□キャンセルは出来かねます
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同時間に一斉に集うせいで人のごった返す社食、社員食堂

その人混みの中に今まさに箸を割ろうとしている同期の姿を見つけ、目の前の席を陣取った

「サンジ、独身寮入るんだって?」

「おー、情報早いなウソップ。しがないヒラの給料じゃ都心に一人住まいはキツいもんで」

「この給料でもキリキリにやってきたっつうのによ、この景気で減給だろ。んで、とうとうギブアップ」

「まあちょうど契約切れるし…大家はうるせぇし、住人はイヤミな金持ちばっかで、それにちっと外出りゃす〜ぐオートロックでガチャン。せいせいする」

恨み骨髄な台詞達は恐らくすべて最後の理由が大元となっているのだろう

それもその筈この男、かつて寒空に身一つ閉め出されたクチであった

「おいおい…不満だらけだな…」

「貧乏人が金持ちの真似事なんかするもんじゃねェって教訓」

「つうか、なんで早々に入んなかったよ」

「……」

「サンジ?」

「…ま、憧れ的な」

「そうだよな〜一人暮らしは憧れるもんがあるよ。寮ったら相部屋だもんな」


それだソレ

それが問題


「あ〜俺も無理してでも部屋借りりゃ良かったぜ」

「プ…したら今頃破産してんじゃねェの、お前」

「…ほんっと独身寮サマサマだよ」

まるで有り難くなさげに手を合わせるウソップにくく、と笑いがこみ上げる

「ま、お前も晴れて仲間入りってワケだ」

「おう、よろしく先輩」

「へへ、頼まれました」

「…そういや、お前の相部屋ってどんな奴なんだ」

「ああ、知ってっかなお前、ルフィっつうんだけど」

「聞いた事あんな」

「イイ奴なんだがな〜」

「ナニ、なんか悪癖でもあんの」

「……エンゲル係数が」

「?なんだそれ」

「一回食を共にすれば分かるさ」

よくは分からないが、ウソップのこの苦い表情をみるからには相当な奴なのだろう

近い内挨拶がてら見に行こうと考えつつ、ややしょっぱい、おまけに具も質素である味噌汁を啜った

「サンジも相部屋の奴と気が合うといいな」

「ああ、サンキュ」

「おっカタ〜い奴だったりして」

「脅すなよ」


瓶底眼鏡の堅物でも

神経質なヒステリー野郎でもなんでもいい


願わくば

「アイツ」以外でありますよう


「ごっそうさん」


手を合わせたついで、いると信じたことのない神様に柄にもなく祈ってみた


******


無神論者がこんな時だけ頼るから

そんな都合のよさに腹を立てたのだろうか


「…………よろしく」


ああ畜生

なんか恨みでもあんのか




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