海賊

□不憫な男の処世術(Z×S←G)
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船首方面から大きく鳴り響く音、笑い声

余波はビリビリと船を揺らし、ティーカップに入ったお茶が追い討ちを掛けるようにテーブルに広げた朝刊を浸す

「……サンジ君」

「イエス・サー、ナミさん…しばしお待ちを」

片手を前に出して恭しく頭を下げ船首に向けて足を進める

カツ

「うわはははは人間パチンコだァ〜!!」

カツ

「すげェ〜ルフィ!!」

カツ

「もう一回やろうぜもう一回!」

カツ

「お〜し、野郎共引っ張れ〜!!」

キュッ

「クゥゥォォォルァァァ!ガキ共!レディの繊細なお耳に雑音をお届けするんじゃねェェェェ!」

何が楽しいのか、きゃいきゃいと満面の笑みでルフィを伸ばすウソップ、チョッパーを順に蹴り飛ばし、さァ次は騒ぎの根源と踏み込んだ瞬間、何かの違和感を覚えルフィの顔面に到達する数ミリ前で靴裏がピタ、と止まる

「……ルフィ、手ェどうした」

「サンジの後ろだ」

言われた通り振り返るとルフィの腕は遥か遠く伸びきって、両手の先はそれぞれ柱に結び付けられている

なにか?俺ァ今パチンコの玉か

人間パチンコ完成か

「…手の方を離せよ?手を」

「手ェ離せねェんだ」

まァな、結んであるからな

「……よし。分かった。いいな、俺がここを離れるまで踏ん張れ」

「おう、分かった」

「少しの間だ。死ぬ気でやれ」

無駄に鬼気迫る声色でそう告げながら待てのポーズを取ったままじり、と後ずさる

後ろを向いてダッシュすれば早いのかもしれないが、万が一後ろからやられてしまえばショックのデカさは前からやられる比ではない

敵に後ろを取らせるなと言うのはなるほどそういうことかと後進しながら頭では少し間違った悟りをひらいた

「あ」

「あ?」

間の抜けたルフィの声

それと同時に踏ん張っていたルフィの足がツル、と滑るのがまるでスローモーションのようにコマ送りでバッチリ目に入った

「待て待て待て待て…待てよオイ」

「ワリぃサンジ。滑った」

スローモーションから一転

「死ぬ気でやれっつっただろお前ウ、ソ、だろぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁ」

一瞬にして空高く消えていったコックを目の当たりにしたチョッパーは状況を把握するまでの数秒間の沈黙の後目を剥いて悲鳴を上げた

「……サ」

「サンジィィィ!」

「……ナ゛、ナミ〜!!!ザンジが、サンジがどんだ〜!!」

サンジが止めに行った筈の騒ぎが何故か一層大きくなり苛々が最高潮に達したナミはバン!とテーブルを叩く

「んもう!うるさいっ」

書庫から出てきたのだろうロビンが傍らで少し眩しそうに目を細めながら空を仰いでいた

チョッパーだけに留まらずロビンまで可笑しな事を言い出した

「航海士さん?今コックさんが飛んでいったけど…いいのかしら」



「……なんでサンジ君が飛ぶのよ」

「どうしてかしらね」



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