海賊
□コミュニケーション不足(Z×S)
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タバコを吸う動作に紛れてガジ、と親指の先を噛む、そんな事でもしないと落ち着かない
入ってきた瞬間からずっと、後ろの存在から与えられる視線が体を萎縮させている
それともそれは単なる取り越し苦労なのか分からない
だけど、ここにいる理由は恐らくそれしか
(今日もすんのか)
「…………」
(アレを、されんのか)
体中を撫でられて
舐められて
噛み付かれて
「………、っ……」
僅かに蘇った昨夜の記憶が瞼を掠め、背後の男には聞こえない程度の小さな声を漏らした
恐怖
期待
嫌悪
興奮
じわ、と目元が涙で滲む
手に握る包丁の刃先が霞んだ
(…俺とアイツが繋がるなんて…おかしいだろ)
最中あんなに滅茶苦茶だったシーンを瞼裏に今度は鮮明に映し出し、耳の端がゾクリと痺れた
「……、は……」
倒れ込みたい
いいや
いっそ海にでも飛び込みかった