Short novel

□お嫁においでよ(前)
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日差しも大分夏らしくなってきたある日。



「ああ、夏だなあ…」


昼餉を終え、職員室で次の授業の支度をしていた半助は、そう呟きながら、ううん、と伸びをした。

開け放した障子の向こうには、綺麗に透き通った青空と白い雲、日差しを浴びてきらきら輝く深緑。


気持ちのいい季節だ。



「ふわあぁ、」

伸びをしたまま欠伸を一つ。


それを見ていた、おなじく側で支度をしていた一年い組教科担任の斜堂先生に、

「土井先生は夏がお好きなんですか?」
と尋ねられる。

「はは、そうですね…
日も長くなって油の節約になりますし、薪も使う量が少なくなるので助かります」

「…きり丸君のドケチが移ったみたいですね」

「いやはや…。
しかし生ゴミが腐りやすくなるのが困ります…」


また近所のおばちゃんに「異臭がする」と怒られてしまう、
そう言ってポリポリと頬を掻く。



何気ない、同僚との談笑。
いつもと何も変わらない、穏やかに過ぎていく午後。



しかしその平穏は一人の青年によって崩される事になる。










【お嫁においでよ】(前編)





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