odai*boco

□06.ひっぱる
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「おい、ちょっと待てって……何かついて…」

「え、どこ……」


!!!!??




「ア…えーと、スマン?」


俺、最悪……。

よりによって二人でディナーって時だ。
せっかく千年公に頼み込んで三ッ星んとこ予約したってのに。
ホントは一緒に行くの、先月から楽しみにしてたってのに。

ドレスだって、似合いそうなのすっげェ悩んで選んだってーのに。


こんな時にかよ……。




ドレスのレースにゴミみたいなのが付いてるのが気になって、取っただけだぞ。

あンの洋裁店、材料ケチりやがったな……。





薄布のドレス、すげー似合ってて不謹慎だけどムラッとくるもんがあった。
ま、薄いのはボディライン堪能したいがための俺の趣味。
それがこんな惨事になるなんて、予想できるわけねぇよな。






「……ハァ…」

「………えーと…」


かなり気まずい状態、俺はただ焦り冷汗かくばかり。

艶っぽい唇が動く。


「ディナーも済ませてないのに、もう脱がすつもり?」



ニヤリと彼女の口端が少しだけ上がる。
つかつかと俺に近寄ると。
破れた裾からは陶器のような白が眩しくて、思わず目線が引き寄せられる。




「焦っちゃダメ、ね?」


クスリと微笑むと、俺の鼻先をピンとはじく。


「…ッ…そんなんじゃねーし……」

「あら。たじろぐなんて、ティッキーらしくないわねぇ」

「俺もそう思うんだけどね。どうもアンタの前だと調子がね…」

「フフッ…光栄だわ」




背中のファスナーを手伝うよう促され、広がる白は眩暈がしそうな程だ。



「ね、このドレス綺麗に戻したらまた着せてちょうだい」



後ろの俺に振り返りもせず、言葉を続ける。







「コレ、気に入ったの」











「さ、行きましょ?」



極上の女に腕を組まれ、部屋をあとにした。


残るは可哀相なドレスだけ。





















===その後===




「そういや、その代わりのドレスどうしたわけ」

「コレ?千年公から贈られたものよ」

「え、マジかよ」

「ええ、『襲われた時に替えがないと困るデショウ?』って言ってたわ」

「………ヘェ(汗)」




これ以上リードされんのはかなわねぇから、煙草でも吸ってごまかすとしよう……。




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