odai*boco

□03.噛む
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中にはびっしりと赤い粒、はちきれんばかりに膨らんだそれらは艶を出し早く食べてくれと望んでいるようで。
一粒だけ摘み取り、口内に放ると甘酸っぱい香りと味が支配する。
堪らなくなり丸ごと噛り付くと口端から滴り落ちる、赤い水。それすら惜しいとちゅっと啜ろうとするあたしを見た彼は。





「いやらしい音たてて…お前のそんなトコ見てると、目の毒だな」





指先についた果汁を舐めとりながら、彼を見る。

煙草をふかしながらすぐ隣であたしを観察する貴方。




「美味しいのよ、みずみずしくて…トマトも苺も、この柘榴も。あたし赤いモノ大好き」



彼の顔を見上げて言うと、貴方はにこりと微笑みをこぼす。そしてあたしの口端を指で拭き取る。

そのまま唇をなぞりながら今度はニヤリと笑う。




「オレも赤いモン好き」






直後唇を塞がれたかと思うと、鋭い痛みが走る。
べろりと舐めとる彼の舌には、真っ赤な血。
あたしの赤、人間の赤。

ついばむように何度も傷口を吸われると、背中がゾクゾクして。


思わず目の前の胸板を押し出してしまう。






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