テニスの王子様

□あいあい傘
1ページ/5ページ

「雨」




誰かの呟く声。

その声に反応した人々は皆、空を見上げ手の平を出す。

乾も同じように空を見上げれば、顔のあたりに冷たい粒が当たった。

歩いている人々は傘を広げ始める。

それを見た乾は慌てて辺りを見回した。

すると シャッターの閉まった店ばかりが並ぶ商店街に目がとまる。

雨宿りをするくらいなら丁度良い場所。

彼は駆け足でそこへ向かった。







空には分厚い雲がいっぱいに広がり、雨音も激しくなる。

その様子に乾は大きな溜め息をついた。

傘を持ち合わせていない彼にとって最悪のタイミング。

天気予報は見事に外れた。



「乾先輩?」

「あ、海堂!」



人通りの全く無い商店街の道にポツンと海堂が立っていた。


「どうしたんすか?こんな所で」

「見ての通り雨宿りだけど?」


「珍しいスね。先輩そういうの、いつもチェックしてるのに」

「俺でもこんな日くらいあるさ」

乾はばつが悪そうに苦笑いを浮かべた。



「…先輩、もしよかったら、入りますか?」



チェック模様の傘をクルクルと回しながら海堂は微笑んだ。

その行動に乾が「可愛いな」と言うと、むっとして大きくクルッと傘を回した。

溜まっていた水が、一気に乾へかかる。



「冷たっ」

「いいんスよ。俺、このまま帰っても」

「わ、悪かった!もう言わないから」

「嘘っスよ、はい先輩」



片側を人ひとり分あけ、乾を呼んだ。


身長的に乾のほうが高いので、海堂の持っていた傘をとり、二人が濡れないようバランスよくさした。






_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ