†雑多の間†
□with
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「え?同窓会??」
『ああ、成人式後にやるって通知が来てな。どうする?』
兄の声がもたらした知らせは、まさに寝耳に水なイベント開催を告げていた。
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「まあ、光さんのところもですの?」
「ってことは風ちゃんもあるの?」
「ええ、先日姉から連絡が来まして・・・」
「どうする?」
「正直、成人式だけでしたらやめようかと思っていたのですけれど、同窓会もあるというと・・・」
「懐かしいよねえ・・・」
「そうなんです」
「何の話をしているんだ?」
悩んでいる二人を見つけ、声をかけたのはフェリオだった。
その後ろにはランティスとイーグルもいる。
「悩んでいるようだったが、何かあったのか?」
「そういえば光は兄君からの通信があったのですよね?それが何か?」
矢継ぎ早の質問に、光と風は目を見合わせる。
二人は身分も責任もある立場で、こんなこと、本来悩むべくもないのだ。
だが・・・・
正直に言ってしまうと行きたい。
「聞くだけ聞いてみる?」
「そうですわね。ダメと言われたら諦めればいいのですし・・・」
『?』
二人は話を進めるが三人にはまったくの謎である。
「あ、あのね、こんど成人式と同窓会があるんだ」
意を決して光が口に出すが
『セージンシキ?ドーソーカイ?』
そう、セフィーロにはそんな単語、あるわけがない。
「成人式と言うのは、20歳を大人と子供の境と定めて、その年に20歳になった人みんなでお祝いする儀式で、同窓会は学校を卒業した後に、その時を一緒に過ごした人たちが集まって再び親交を暖めるパーティーのようなものですわね」
「フウもあるのか?」
「ええ、成人式はみなさんあるのですけど、偶然私も光さんもその後に同窓会があるんです」
「行きたいのか?」
「もちろん行きたいよ、懐かしいし。でも・・・」
懐かしい友人たちには会いたいし、故郷に行きたい思いもある。
けれど、セフィーロを気軽に離れられるほど軽い立場にいないこともわかっているのだ。
「行ってくるといい」
そう言ったのはランティスだった。
「え?でも・・・」
最初に来たのは困惑だった。
嬉しいけれど、無理を通すつもりなどない。
懐かしさはあっても、光の最優先は共に生きると決めた大切な人々と、彼らが暮らすセフィーロなのだ。
「今の時期ならそう忙しくはないから問題は無いだろう。それに、ただでさえ俺たちはお前たちを元の世界の人々から奪ってしまったんだ。少し帰ることも許さないほど狭量では無い。聞いてみなければ断言はできないが、きっと導師達も同じように言うだろう」
「そうだな、お前たちが生まれた場所だ。今まで忙しさにかまけて十分な里帰りもさせてやれなかったんだから、この機会にしばらく行ってくるといい」
「フェリオ・・・」
「ねえ、ヒカル」
「なに?イーグル」
突然、先ほどから何か考えているようだったイーグルが、ニコニコと光に声をかけた。
「僕もトーキョーに行きたいんですけど、一緒に行ってはダメですか?」
爆弾投下
『イーグル!?』
驚いて声を上げたのは男性陣だが、光と風もビックリである。
その場の視線がイーグルに集まる。
「だってヒカルが生まれた場所ですよ?気になるじゃないですか。それに、僕らはご家族に挨拶もしていないのが現状です。ヒカルの話を聞くとどうも泣く泣くというか、家出されて一切連絡が取れなくなるのは困るからといった感じで、納得した上というわけではなさそうでしたし。幸いしばらくは僕も余裕がありますから、ちゃんとご挨拶をして納得していただくべきかと」
イーグルの言うことはもっともである。
正直そちらの方まで頭が回っていなかった。
こうなったら・・・
『俺たちも許可をもらってくる』
『え!?』
この後、以外にもクレフからの許可は簡単に得られた。
みんな、口には出さなくとも気にしていたようで、20日間の休暇と共に暖かく送り出してくれた。
かくして、二人の少女の成人式の話は、なぜか異世界の住人を連れての大々的な里帰りとなったのである。
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