だぁ!だぁ!だぁ!

□uneasy thing
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uneasy thing



ミンミンと鳴くセミの声をバックに昼寝をする。
これは学生にとって夏休み最大の贅沢だと思う。
恨めしげに寝ている彷徨を見て、目の前の宿題へと目を移す。
………はぁ。
どんなに睨んでも、問題は解けない。
居間でやれば何だかんだ言って彷徨が教えてくれるかと思ったのに。
この有り様じゃあ、ねぇ……。

「仕方ない、明日教えてもらうとしますか。」

手早くテーブルにあったもの達を片付け、自室へと戻った。


部屋にいてもすることないしなぁ…
だからといって宿題は無理だし。
音楽を聞こうにも、CDは貸しちゃったし。
どうしようかな。


そんなことをぼけっと考えていると、カタンと小さな音が聞こえた。
振り返ってみると彷徨が襖を開け、ジッとこっちを見ていた。
トタトタと近づいて彷徨の目を見る。
焦点のあっていない瞳に首を傾げた自分が映った。
「彷徨?起きたの?」
その瞬間、何かが弾けたかのように抱き締められていた。


「か、彷徨っ?!」
自分の上擦った声と一緒に、腕から逃げようと抵抗するが更に力強く抱きすくめられ、状況は悪化するばかり。
諦めて抵抗を止めても彷徨は微動だにしない。
(どうしよう………)一人考えに耽(ふけ)っていると、
「だれも、いなかった。」
ぽつり、と彷徨は言い始めた。
「真っ暗な世界に俺一人だけで、ルゥもワンニャーもいなくて。もとの生活に戻ったんだと思った。
でも、未夢も居ないことに気が付いて…。俺、ものすごく不安になって……」
抱き締められて顔は見えないけれど、体が小さく震えていることに気が付いた。
「起きたら隣にいた未夢がいなくなってるし…。いつのまにか、一人が怖くなってた…」
無意識のうちに彷徨の背を撫でていた。
「大丈夫、私は彷徨のそばにずっといるよ?」
そう言ったあと、私も彷徨を抱き締めかえした。


end
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