だぁ!だぁ!だぁ!

□もう恋は始まっていた
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「ちがう、ちがう、ちがうのっ!」
真夜中だというのに未夢はがばりと布団から身体を起こすと、その長い髪を左右に揺らしながら小さく呟いた。


何が「ちがう」のかといえば、先程まで未夢が見ていた夢の内容についてである。
もともと未夢は夢をよく見、そして起きたあとでも覚えている方だった。
なので夢を見ることは別段不思議なことなどなにもない。
夢の内容だって、幼いころの記憶や、学校のこと、家族のことや、理想的な世界観の夢だって見ていた。
そのことだってとりわけ可笑しいところなど無いのだ。
それなのに何故、今夜に限ってこんな夢を見るのだろうか。
未夢は一気に覚醒した頭で考える。
選りにも選って、なぜ、どうして、どんな理由で、あの同居人であるはずの彷徨とキスをする夢を見るのか!
そんなこと実際にあるはずも無いのに!



その夢の中で未夢は心底幸せそうに笑って彷徨と手を繋いでいた。
一方の彷徨もそんな様子の未夢が愛おしくて堪らないとでもいうような甘い笑みを浮かべ、引き寄せられるように未夢の唇を奪っていく――。
思い出しただけで頬に朱みが差すのがわかる。
もうダメだ、深く考えたら頭が溶けてしまいそう。
今の夢は忘れて、もう一度寝直そう。
幸いにもまだ寝る時間はたっぷりとある。
寝れば朝には忘れているだろうと淡い期待を込め、ばふっと勢いよく布団を被り未夢はゆっくりと目を閉じた。



もうは始まっていた


(……どうしよ、寝付けない!)



end


お題 幼なじみに恋する5題より
確かに恋だった

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