だぁ!だぁ!だぁ!

□不器用で器用な優しさ
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不器用で器用な優しさ
(だぁ!二万打フリー)


「ねぇ、彷徨」

「ん?」


居間に座っている彷徨に声をかけても、目は手元の本に向かったまま。
廊下の冷たい空気を一緒に纏って中へと歩を進めたせいか、部屋の暖かさが掻き回されていく。
静かに彷徨の背後へと近づいた私は、その大きな背中に自分の額を押し付けた。

一瞬小さく肩が震えただけで、あとは何の反応も無い。
いきなりこんなことしたら驚くはずなのに、私の雰囲気がいつもと違うことに気づいているのか、何も聞いてこない彷徨の優しさが嬉しくて目を瞑った。
しばらくの間、二人の息遣いとページをめくる音しか聞こえてこない。
それが心地良くて思わず笑みがこぼれる。


不意にパタンと本を閉じた彷徨は、体を半回転させて後ろにいた私を抱きすくめた。
おとなしくそれを受け入れる私はこの関係にずいぶんと慣れたのだと思う。


笑顔を崩さず、暖かい胸にすりよった。
すると背中にあった腕が頭へとまわり、ぐっと耳を押し当てられる。
規則正しくトクントクンと聞こえる心音に耳を澄まして深く息をはいた。


「…安心しろ、俺がいるだろ」
「!!!」


押し付けられていた耳にこもった声と振動が響く。
自分でも気づいていなかった淋しさが少しずつ溶け消えていくのを感じておどろいた。

わたし、淋しかったんだ…

涙の雫が頬を伝う。
それをぺろりとひとなめされて、また強く抱きしめられた。


敏感に私の淋しさに気づいてくれた彷徨。
きっと私一人じゃ気づくことも、淋しさをなくすこともできなかったと思う。
何も聞かず、ただ優しさで包んでくれる、そんな不器用で、でもすごく器用な彷徨が傍にいてくれて本当によかった。


「ありがとう」



END


******
お待たせしましたー!
二万ありがとうございます!
これからも頑張りますので応援お願いします(^ω^)

2008/08/03(一万打達成)
〜2010/01/31(二万打達成)
2010/03/09 掲載
2010/11/14 移転掲載

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