だぁ!だぁ!だぁ!
□変わらないきみのまま
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きみが笑った、ただそれだけだったんだ。
西遠寺と彼女が付き合っている、と噂で聞いたのはいつだったか。
興奮したようにその話の詳細を捲し立てた友人に、僕はただ頷くしか出来なかったように思う。
僕にとって彼女――光月未夢――は特別な存在だった。
当時、やっとのことで入院生活から抜け出した僕には、久しぶりすぎて慣れない教室に戸惑いを感じてならなかった。
追いつけない授業、知らない話題、馴染めないクラスの雰囲気……。
どれも僕にとって疎外感に思い、苦痛でしかなかった。
そんなとき、彼女が転校してきた。
僕と同じ、慣れない環境におかれた彼女は不安げに視線をうろつかせていたのをよく覚えている。
偶然にも席が隣になった僕は、ただ仲間が出来たと喜ぶだけでろくに周りに目を向けていなかった気がする。
あの自己紹介の時に、彼女と西園寺には始めから関わりがあったのだと知っていればよかったのだ。
そのことを知らない僕はただただ仲間を見つけた喜び一心で彼女と仲良くなった。
お互い慣れないクラスでの不安から、すぐに打ち解けられたように思う。
好きな歌手の話とか、つまらない授業の先生の話とか、毎日くだらないことを話して笑いあっていた。
多分、あのとき彼女と1番仲が良かった男子は僕だったと今でも思う。